※この記事は、2023年3月7日に公開したものを再掲載しています。
マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から連載に繋がった作者と作品を紹介する「それはDAYS NEOから始まった」、第14回!
今回は2021年8月にオンラインで開催された「DAYS NEO REAL ONLINE」でモーニング編集部・岩間(以下、岩間)とマッチングし、2023年1月からコミックDAYSで『高田教頭の脱出』を連載中の作者・エドモンド田中(以下、田中)さんにインタビュー!
DAYS NEO REAL ONLINEでの編集者との出逢いから、連載が始まったいま感じていることなどを担当編集者・岩間 同席のもと語っていただきました。
作品紹介
『高田教頭の脱出』

コミックDAYS、Dモーニングで好評連載中!!
『高田教頭の脱出』/エドモンド田中
長い人生には、数えきれないくらいの窮地が訪れる。
だからこそ、時には「逃げる」ことも大切だ…公立高校の教頭兼生活指導を務める高田一徹の日常も、中間管理職ならではのピンチの連続。真面目一徹な生き方に自負を持つ高田教頭は、自分なりのやり方でそこを切り抜けようとするが、ここから始まる「負の連鎖」が、職員室を盛り上げて、もとい騒がせてしまうことに…というようなギャグ漫画です!
『高田教頭の脱出』チームの紹介

埼玉県出身。2016年「アルパカなれ」で小学館新人コミック大賞の少女・女性部門入選。同作品で「flowers」増刊号でデビューを果たす。その後、同誌にコンスタントに読み切り作品を発表。「flowers」本誌には、2020年8月号に「戦う理性ちゃん」で初掲載。おじさんやスーツ、メガネへの思いが高じて、2022年11月に「高田教頭の脱出」で「モーニング」初登場。同タイトルは、2023年1月よりコミックDAYSおよびDモーニングで連載開始。好きな漫画は『寄生獣』『デビルズライン』など。

四半世紀いた女性コミック誌からモーニングに移って、はや4年半。
流儀は違えど、面白い漫画を世に送り出したい気持ちは同じ。週刊連載、一緒に目指しましょう!
もがいている主人公が好きです。
好きな人やものに一途な主人公が好きです。
優しい心を持った主人公が好きです。
たとえ「骨の髄までありきたりだ」(山田太一「早春スケッチブック」より)と言われても、どの人にだって必ずドラマがあります。人間の数だけドラマが…!
まだまだいろんな人間を、漫画で読ませてください。待ってます。
DAYS NEOのプロフィールをみて、逢いに行く編集者を決めました
―田中さんとモーニング・岩間さんは2021年8月に開催された「DAYS NEO REAL ONLINE」にて出逢ったそうですが、なぜ参加しようと思われたのですか?
田中:
「ネームでも編集者に見てもらえる」と聞いたからです。元々、連載媒体のジャンルにこだわりがあんまりなくって。当時は少女誌でも青年誌でも、と考えていたんです。実は3~4年前にある出版社の少女マンガ雑誌に持ち込んで賞をいただいたんですけど、その当時も「この作品はどの媒体なら受賞しやすいかなぁ」って、描き上げてから考え始めて応募したくらいです(笑)。
―少女マンガ雑誌での受賞経験がおありなんですね!今は青年誌の編集部(モーニング編集部発・コミックDAYS連載)で活躍されていると思うと、ジャンル的にはだいぶ違いそうですね。
田中:
2019年頃、『高田教頭』の1話目のネームを少女マンガ誌の編集者に見てもらったんですが、なんと人生初の「全ボツ」だったんです。でも、作品自体は気に入っていたのでどこかで出したいな…と機会を伺っていました。そんなときにDAYS NEO REAL ONLINEの話を聞いて、参加を決めました。

web上でクリエイターと編集者がアバター同士で会話する方式で実施。
約120名のマンガ家と15社・29編集部・52名の編集者が参加した。
―DAYS NEO REAL ONLINE当日、どうして岩間さんの話を聞いてみようと思ったんですか?
田中:
青年誌を選んだ理由は、懐が深そうだったからですね。その中でも岩間さんに話を聞こうと思った理由は、DAYS NEOの編集者ページのプロフィール欄を見て、自分と感性が合うかも、と思ったからです。
岩間:
そうだったんですか? 編集者プロフィールってそんな感じで読んでもらえているんですね。イマドキの編集だと思ってもらえるように、せっかくだしこの機会にプロフィールを見直してみようかなぁ。
田中:
岩間さんはそのままでいいと思います(笑)。「高田教頭と近い年齢層だ」と思えたことも出逢えたキッカケなので。
DAYS NEOも、私が参加したDAYS NEO REAL ONLINEも、マンガ家が編集者について知ることができる情報は限られてるんですよね。マンガ家としては「ドラマが好き」とか「サスペンスが好き」といった情報があると、どんな感性の編集者なのかわかって助かります。DAYS NEOの編集者プロフィールやSNSもそうですが、なんらかのヒントがあると、マンガ家としては安心して話を聞けますね。
岩間:
そういえば、当日は『高田教頭』のネーム以外に、ほかのネタ案も見せてくれましたよね?
田中:
そうですね。2~3年前に受講した東京ネームタンクさんのフォーマットをもとに、簡単なあらすじとキャラがわかるようなペライチの「ネタ案」を作成して、複数持参しました。

フォーマットは東京ネームタンクさんのものを使用していた。
―当日、岩間さん以外にはどんな編集者と話をしましたか?
田中:
モーニング以外だと、マガジン系の編集部を回ってみました。ただ、編集者の方ひとりひとりがたくさん時間を割いてくれたので、そこまで多くの編集部を回ることができたわけではありません。編集者1人あたり30分くらいお話できたでしょうか…皆さんかなりじっくり読んでくれて、持っていった企画にひとつずつしっかりコメントをくれました。
連載媒体によって読者・編集者の反応が大きく異なる
―少女マンガ誌の編集者とも作品づくりをしたこともある…とのことですが、少女誌と青年誌で編集者、連載形態の違いなどはありますか?みてどう思いましたか?
田中:
あくまで私の経験談なのですが、少女誌の読者にはギャグマンガが受け入れられづらい…ような気がします。実際、オチでイケメンではない男性が出てくるショートマンガを編集部に提出したときは「男性キャラが気持ち悪すぎてムリ…」という反応が多かったです。
岩間:
僕も女性誌(BE・LOVE編集部)での経験が長いですが、やはり少女・女性マンガに出てくる男性キャラは目の保養になることを求められる傾向がありますね。編集者側も、そんな読者の傾向を織り込んだ意見を言うことがあると思います。
田中:
少女・女性マンガでギャグマンガを描くなら、「イケメンで笑わす」という工夫が必要なんだと思います。実は『高田教頭』も、コミックDAYS連載とはいえ、1話目で際どい下ネタがあるので大丈夫かな…と少し不安に思っていました。3話目まで読んでもらえたら「意外に下ネタがメインじゃないな」とわかってもらえるはず! と信じてやってました。
モーニング編集部内で女性からも男性からも支持を得て連載へ
―マッチングしてから、連載開始まではどのような流れでしたか?
岩間:
マッチングしたのが2021年8月。DAYS NEO REAL ONLINEはお互いアバターだったので、マッチング当初の手探り感から、だんだんと関係を深めていく面白さを感じていました。その後すこし期間が空いて2022年6月頃、3話分のネームを出す連載会議があったのでそこに提出しました。そこで約30作品中、有難いことに2番目の評価をもらって。お試し期間として4回ほどモーニング本誌に読み切りを掲載して、いよいよコミックDAYS(とDモーニング)で2023年1月から連載がスタートできました。
―連載会議、30作品中の2位…ってすごいですね!?
岩間:
田中さんには少し申し訳ないのですが、ここまでの高評価は自分でも意外でした。ギャグマンガは好き嫌いがキッパリ分かれやすいジャンルなんですよね。先ほどもありましたが、少女・女性向けマンガの編集部・読者はギャグに厳しい。ナンセンス系は特に…。この連載会議での結果を踏まえても、田中さんが青年誌に来てくれたのはとてもポジティブなことだったと思います。
田中:
連載会議に通るまで、他社さんと進めていた案件などでアレコレ動いていたので、待たされた感は全くありませんでした。連載ペースさえつかめればもう1作品いけるか…!? と思っていたのですが、さすがに甘い考えでした(笑)。
岩間:
『高田教頭』は女性編集者からも面白いという声が多かったので、ギャグマンガの枠を超えて多くの人に楽しんでもらえる可能性を感じています。まずは『高田教頭』をしっかりつくっていきましょう!
高田教頭と岩間さんが同世代なので、リアリティのあるエピソードをたくさんもらえる
―実際にコミックDAYSで連載が始まって、お忙しい毎日ですか?
田中:
今は「3週分描いたら1回休み」という連載形態なので、週刊連載よりはゆとりがあります。コミックDAYSは連載形態が柔軟なのもありがたいですね。ただ、それでも〆切直前は徹夜になってしまうこともしばしばあります…。
岩間:
週刊連載はもちろん、月3回の連載ペースもスピード感はとても早いですよね。そんなスケジュールで作品づくりを続けている作家さんにはアスリートのようなすごみを感じます。
―打ち合わせはどれくらいの頻度でやってるんですか?
岩間:
どれくらいでしょう…。厳密に決めているわけではないですが、田中さんがネタを思いついたら連絡をくれて、すぐ打ち合わせ! って感じなので、週1~2回だと思います。打ち合わせは基本的に電話です。田中さんがいっぱいネタを出してくれるので、打ち合わせはそのネタを深掘りしていくことが多いですね。
田中:
出したネタを、岩間さんが個人的なエピソードで肉付けしていってくれるんです。高田教頭と岩間さんが同世代なので、リアリティのあるエピソードをたくさんもらえて。「奥さんのことは好きだし早く家に帰りたいんだけど、色々あって帰れなくて、結局怒られる」みたいな悲しいエピソードとか。そんな話をたくさん聞けるので、打ち合わせは楽しいです(笑)。
岩間:
共感して読んでしまうのがいいことなのかは疑問ですが、田中さんが出してくれたネタに一人の読者として乗っていけるのはこちらとしても楽しいですし、それで作品を面白くしてもらえるなら何でも提供したいです。僕みたいな中年層からの共感を強く得られる作品だと思うので、僕ら世代の読者を多く抱えているモーニング編集部は『高田教頭』にぴったりだと思います。
―『高田教頭』はギャグマンガに分類されると思うのですが、「オチ」はどのように考えていらっしゃるんですか?
田中:
出だしとオチだけ決めて、その間が面白くなるように中身を埋めていくようなイメージで話づくりをしています。
岩間:
さっきも話に出ましたが、田中さんは本当にたくさんのネタを出してくれるんですよね。ネタ自体はどうやって考えているんですか?
田中:
マンガとは関係ないことをしているときに出てくることが多いですね。映画館の予告が流れているときとか、家事・育児に忙殺されているときとか…(笑)。
自分の好きなものだからこそ、筆がノる
―そういえば、なぜ「教頭先生」を主人公にしたんですか?
田中:
作画をするとき、自分の好きなものがないとモチベーションを保てなくて(笑)。もちろん自分がおじさんやスーツ、メガネが好きだから…というのも理由だと思うんですが、おじさんってバリエーション豊富で特徴を出しやすいんですよね。個人的には、整った美人やイケメンよりも、おじさんのほうが描きやすいです。
岩間:
田中さんのおじさん好きは作品にもバッチリ活きてますね! 以前、モーニングで新人賞の選考風景をルポマンガにする企画があったんですが、ある新人マンガ家さんから「いろいろなパターンのおじさんを描き分けるのが大変…」という声をもらった記憶があります。みなさん苦労しておじさんを描いてらっしゃいました。
田中:
えぇ…こんなに描きやすいのに…。世の中におじさんブームが来ることを祈っています。
―おじさんを好きになったキッカケってあるんですか?
田中:
昔からマンガでサブキャラのおじさんが大活躍するシーンが好きだったんですよね。たぶん「ギャップ萌え」なんだと思います。いつもはパッとしない冴えないおじさんが主人公たちを助けるためにここぞでカッコよく活躍するシーンとか、大好物です。
マンガ家・編集者、お互いの個性が『高田教頭』に活きている
―担当編集者・岩間さんからみた、マンガ家・田中さんの魅力はどんなところでしょう?
岩間:
切実なシチュエーションを豊富なバリエーションで描けることです。切実さってマジメなマンガでも大事なことなんですが、そのうえで個性的にぶっ飛んだ展開をつくってくださることが大きな魅力だと感じています。『高田教頭』の場合、カッコよさよりも中年のジタバタ感をどれだけ面白く描けるかが大切だと思うので、田中さんの個性にもピッタリあった作風だと思います。
田中:
うわ、面と向かって聞くとこっぱずかしいですねコレ!
―そんな田中さんにもお聞きします(笑)。マンガ家・田中さんからみた、担当編集者・岩間さんの魅力はどんなところでしょう?
田中:
失礼な言い方になってしまうのですが、これまで担当してくださった編集者のみなさんと比べても「当たりだ…!」と思っています。
岩間:
確かに、こうやって言われるとドキドキしますね(笑)
田中:
打ち合わせをしていて、「直せ」という圧があまり強くないんです。出したネタや原稿に対して、まず感想、修正はあくまで提案…という感じで、こちらに考える余地を与えてくれるから、遠慮せずにネタや原稿を安心してぶつけられる。編集部によっては「こう直さないと先に進められないよ」と強めの修正指示が入ることもあったのですが、岩間さんとの打ち合わせではそんなことは全くないですね。
岩間:
ギャグマンガは特にマンガ家の聖域…作家性が全面に押し出されるジャンルだと思っているんです。なので、ギャグに対しては編集者が細かい修正をお願いするべきではないと考えています。ただ、もちろん最初の読者として客観的に読んだときに面白さが伝わりにくいと思った箇所なんかは遠慮も我慢もせずに指摘しています。
田中:
女性マンガ誌での編集者経験が長いことも影響しているんでしょうか、岩間さんにはとにかく柔和な方という印象を持っています。これに加えて、先ほどもお話しした通り『高田教頭』と同世代の方なので、リアリティあるシーンを描くためのエピソードをたくさんくれるのもすごくありがたいですね。
岩間:
自分の実体験をお話してきただけなのですが、作品のためになっているなら何よりです(笑)。
―ベストマッチングですね…! 本日はお忙しいなかお時間いただきありがとうございました!
田中:
こちらこそありがとうございました!
岩間:
『高田教頭の脱出』はコミックDAYSで今すぐ読めます! ぜひ読んでみてください!

高田教頭の脱出