【特別対談】それはDAYS NEOから始まった『忍者と極道』近藤信輔 ✕『龍とカメレオン』石山諒
マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から
連載に繋がった作者と作品を紹介する
「それはDAYS NEOから始まった」、今回は超・特別編!
コミックDAYSで『忍者と極道』を連載中の近藤信輔(以下、近藤)さんと
ガンガンJOKERで『龍とカメレオン』を連載中の石山諒(以下、石山)さんの
対談記事をお届けします!
近藤さんと石山さん、お互いに「DAYS NEO出身作家」というだけでなく、
実は「元・ジャンプ作家」で、なんと「元々ご友人だった」とのこと。
そんなおもしろい共通点を持つおふたりのお話を聞きたい!
せっかくなら対談形式でお互いの作品を語り尽くしてもらいたい!
可能な範囲でジャンプ時代の裏話も聞いちゃいたい!!!
…というDAYS NEOのワガママに近藤・石山両先生が快くお応えくださり、
お忙しい中でお時間をつくってくださって実現できた超豪華・対談企画です。
ワガママついでに
「読者プレゼント用に直筆サイン本も用意したいんですけど…?」
なんて怖いもの知らずにご相談したところ、なんとこちらも即★快諾。
読者に対する両先生のホスピタリティが上限突破されていたので、
対談記事の公開にあわせて両先生の「直筆サイン本」の
フォロー&リポストキャンペーンも開催します!
この「直筆サイン本」はこの企画でしかGETできません。
本当にお見逃し注意!です。
応募方法はこの記事の一番下を確認してください!
目次
- 対談参加者の紹介
- 『忍者と極道』のつくりかた
- 『龍とカメレオン』のつくりかた
- ふたりの出会いと第一印象
- ふたりがDAYS NEOに投稿したキッカケ
- 近藤さんからみた『龍とカメレオン』の魅力
- 石山さんからみた『忍者と極道』の魅力
- 『忍者と極道』と『龍とカメレオン』【おまけページも全力で】発売中!!!
- 「直筆サイン本」プレゼントキャンペーン応募要項
対談参加者の紹介
『忍者と極道』のつくりかた
ー本日はお時間いただきありがとうございます。今日は、フリートークで思うがままにお話ししちゃってください(笑)。おふたりが盛り上がってくれた内容をイイ感じに編集して記事にします。よろしくお願いします!
石山:
よろしくお願いします。前回の記事のときもいい感じにしてくださったので、今日も安心してます(笑)。
近藤:
よろしくお願いします。久々に石山くんに会えてうれしいです。
ーそれでは早速、近藤さんに…
近藤:
あっすいません!ちょっとお手洗い行ってきてもいいですか?
ーえ、あ、はい。お手洗い、この部屋を出て右手にございます。
近藤:
ごめんなさい!すぐ戻ってきますー。
(近藤さん、退室)
石山:
近藤さん、自由すぎでは(笑)。
いま始まったとこなのに(笑)。
竹本:
すいません、もしかしたら大勢いるから緊張してるのかも(笑)。
石山:
そんなタイプじゃないでしょ(笑)。
せっかくですし、最近の『忍者と極道』の話しません?
(近藤さんが戻ってくるまで約7分間、『忍者と極道』トークで盛り上がる)
近藤:
すみません、お待たせしました。何の話してたんです?
石山:
最近の『忍者と極道』の話をしてました。
「東京ってあんなめちゃくちゃにしちゃっていいんですね」って。
近藤:
あーなるほど。そうですねぇ。
麻薬をテーマに東京でテロみたいなことをするなら…「水道」かなって。
樋口:
麻薬×東京でアレ以上に大きな被害を出す方法、思いつかないです。
竹本:
近藤さんは無邪気に邪悪なことを考える方ですからね(笑)。
樋口:
スクエニは新宿なので歌舞伎町と一緒に大惨事なんだろうな…。
ギリギリ生き残ってたとしても水飲んじゃってアウトでしょうね。
近藤:
これからもっとすごいことになりますから。
楽しみにしててください。
石山:
前から聞きたかったんですけど、どのくらい先の展開まで考えて連載してるんですか?
近藤:
作品のラストまで、ザックリ考えてます。
ほんとザックリなんだけど、それぞれの章の結末とか、その章でどんな敵と戦ってどんな展開になるか、は考えてる。
石山:
章で登場するキャラクターはその都度考えたりもあります?
それとも全員考えてあるんですか?
近藤:
ボスキャラは前から考えてあるけど、それ以外のキャラはその都度考えたりもしますね。
竹本:
「退場していく順番」が大切なんですよね?
近藤:
そうそう。
味方サイドも敵サイドも「だれがどこでどうやって退場するか」は決めてます。
藤田和日郎先生がなにかのインタビューで「キャラクターの死に様を決めて、その死に様に向かって描いていく」って言ってたのを読んだことがあって。だからいま、『忍者と極道』は藤田先生方式でつくってるのかもしれません(笑)。
おれたち、ジャンプ時代はむしろその場その場でつくっていく感じでしたよね?
石山:
たしかに!「いま票を獲らないと!」ってライブ感強めでやってましたね。
先のことなんて考えてなかったですよね(笑)。
近藤:
おれも当時の担当編集者に「ヘタに先のことを考えると死ぬよ」って言われてたなぁ(笑)。今はフィールドを変えたのもあって、違うやりかたに挑戦してみてるって感じですね。
石山:
『忍者と極道』をみてると、今のやりかたの方が向いてたっぽいですよね?
近藤:
今のところはハマってる気がしますね。
石山:
キャラの死に様、めっちゃ力入ってますもんね。
バトルの最後にキッチリ殺すのもカッコいいし、どのキャラの最期もカッコいい。
ちゃんと章のラストが盛り上がるようにつくられてるのが本当にたまらないんですよ。
竹本:
『忍者と極道』は首が飛んでから本番ですからね。
一同:
(笑)
石山:
めっちゃわかるーーーワクワクしますよね!
「うわっ!首飛んだ!死んだぞ!」って(笑)。
近藤:
退場の仕方から考えてるから、敵のバックボーンもちゃんと描きたいんですよね。
キャラクターに説得力を持たせたいし。人の鬱な部分を描くわけだから、ちょっとぼく自身も引っ張られちゃうこともあります。
竹本:
それも近藤さんなりのキャラクターへのレクイエムなんですよね。
石山:
キャラクターと一緒に苦しもう…ってことですもんね。
それはメンタルにきそうだなぁ…。
敵キャラのエピソードもリアルに嫌な感じじゃないですか。
近藤:
説得力のある、パンチの効いたエピソードを描きたいからね。
実際にあった事件とかを調べて参考にしたりすることもありますよ。
石山:
読んでる方も苦しくなるような悲惨な過去があって、そいつは結果的に負けて死んじゃうんだけど、最期は笑ってる…という方に舵を切ってくれるから安心して読めてます。
ー物語全体や各章の終わらせかた、キャラの退場のしかたを決めている…ということですが、いつごろ決めたんですか?
近藤:
企画をつくった段階である程度決めてました。
ボスキャラを8人つくろう、それなら忍者も8人…と決めた時点で、この人数だったらこうしたいな…というふうに膨らませていきました。
『忍者と極道』では「章ごとにボスがいる」って構成をやりたかったんですよね。ボスを倒すと次の章にいく。ロックマンみたいに。だから「ボスキャラを立てる」ってことをすごく意識してます。最初にボスキャラのバックボーンを考えて、次に忍者のバックボーンを考えて…って順番で考えていきました。
石山:
絶対、初期構想より連載延びてますよね?そんなことないですか?
近藤:
めっちゃ延びてます。(即答)
一同:
(笑)
石山:
いやそうだと思った!
キャラが全員立ちすぎてますもん!
近藤:
本当だったら3~4年くらいで終わらせる予定だったけど、すでに…(笑)。
グラスチルドレン編くらいからやっぱ敵の部下もちゃんと描きたくなっちゃったんです。個人的に、子どもたちのことは特にしっかりと描いてあげたかった。ただ、一度それやっちゃうと次の章でも同じようにやりたくなっちゃうんですよね。
今にして思えば「自分で面倒くせえしばりつけちゃったな」って(笑)。
石山:
色んなキャラをちゃんと描かないと終わらない、みたいな(笑)。
竹本:
こっからまた展開巻かないとダメっすね!
一同:
(笑)
『龍とカメレオン』のつくりかた
ー石山さんはどんなふうに作品をつくってらっしゃるんですか?
石山:
ぼくはジャンプのころから変わらず、まじでライブ感。
近藤:
えっ!今も!?
石山:
ですです。描きながら次のアイデアが出てくるんです。
一番最後だけは決めてるけど、その他はあんまり。今も脱線してるし(笑)。
近藤:
石山くんは根っからの少年マンガ気質だよねぇ(笑)。
石山:
だから、ぼくは近藤さんみたいに章ごとの終わりを決めてるってことはないですね。
「最後はこうなる」って決めてて、それまでにどんな章が入るのかも連載しながら決めていく。思いついたタイミングでアイデアとして置いといて、使えるときに使っていく感じですね。
ー『龍とカメレオン』は単行本のヒキ、1巻もそうでしたが8月に出た2巻もめちゃめちゃ次の巻への期待が高まるようにつくってらっしゃると思うんですけど、これもライブ感の中で生まれてるんですか?
石山:
「いいヒキにしたい」って意識はしてます。ライブ感でつくってますけど(笑)。
連載してる中で「これが1巻の最後の話だから」ってなったら、元々描こうって決めてた内容に気になるヒキを加えたり、その話自体をより良い話にしたりとか。
樋口:
ヒキが決まるのも、かなりギリギリのタイミングですね(笑)。
1巻も2巻も、これ以上無いレベルのものをバスっと入れてもらったと思ってるんですけど、決まったのはほんとにその月のネームをやってるとき…って感じでした。
近藤:
そーーーなんだぁ…(驚)
石山:
だから、2巻で「合宿編」をちょうど収めたんですけど、実は1話多くなっちゃって。で、単行本が少し太くなっちゃった。なんとかねじこんでもらえたからよかったなって…(笑)。
近藤:
ねじこんだんだ(笑)。
竹本:
ぼくらなんて「単行本、残り30ページです」ってなってから「じゃあ次30ページでつくりましょう」なんてやりましたよね(笑)。
近藤:
やりましたねぇ。WEB連載はそこの融通が利くから。1話で15ページ描こうが30ページ描こうが自由なんですよ。
石山:
実はガンガンJOKERもそうなんですよ。信じられないですよね!?
竹本:
えっガンガンJOKERさんってページ数自由なんですか?
樋口:
かなり自由にできますね。作家さんの希望を聞いてから台割をつくっているので。
竹本:
紙の雑誌、たとえばモーニングは作品ごとに決まったページ数があるから、ページ数の増減を言い忘れてたらマジでヤバいです。編成担当に怒られちゃう。「てめぇシロウトか!」って(笑)。
近藤:
ジャンプもページ数はガッツリ決まってましたね。
増ページなんかは担当さんが相当頑張って取ってくれてるイメージ。
石山:
だから増ページのときはこっちも気合を入れて描いちゃう(笑)。
近藤:
でもページ数が多すぎるとそれはそれで負担にもなりますしね。
石山:
難しいですねー、作画のこととか考えずにネームって切るじゃないですか。
で、作画のときに恨むじゃないですか。ネームを切った自分を。
ヒキでめっちゃ大勢の人がいるページがあったりしたらもう…!
竹本:
やっぱ石山さんもそういうのあるんですね(笑)。
近藤さんも「なんでコイツこんな造形にしたんだろ」って、最近ずっと思ってるでしょ?
近藤:
ずっと思ってます(即答)。
一同:
(笑)
石山:
え、キャラですか(笑)?
近藤:
そう。孔富ってやつです。
人間の体が縦に2つ繋がってるやつで、手が4本…とかだったらまだマシだったんだけど、胴体そのものが2つくっついてて、そのうえ動き回るもんだから作画は本当に面倒くさいです。
石山:
アイツは確かに描くのめんどくさそうですねぇ…。
近藤:
しかもそんな構造の人体って、参考資料とかないんですよ。
どの筋肉がどう繋がってて…とかを考えるのも毎回苦労させられてます。
でもなんとか自然に動いてるようにしたいし、頑張るしかないんです(笑)。
石山:
リアルってそういうことですしね。ちゃんと描かれてないと「気持ち悪さ」も表現できないから。
近藤:
それでどんどん作画コストが圧迫されてる気がしますね。でも次の章は比較的服がシンプルだから、そこは楽かも。次はぼくじゃなくてアシスタントさんが死にます。
一同:
(笑)
石山:
絶対どこかにキツいとこあるんですね(笑)。
竹本:
だいたい近藤さんが死ぬかアシスタントさんが死ぬか両方死ぬか、締め切りを超えちゃってぼくが死ぬかですね。
石山:
壮絶な仕事場ですね(笑)。
ふたりの出会いと第一印象
ー近藤さんと石山さんがめちゃめちゃ仲良しなのはこれまでのやりとりからもすごく伝わってきたのですが、そもそもいつ、どうやって出会ったんですか?
石山:
出会いのキッカケは長谷川さん。ジャンプの作家さんですね。
近藤:
ココで名前出しちゃって大丈夫かな?(笑)
石山:
長谷川さんなら許してくれます!(笑)
近藤:
そっか。じゃあ長谷川くんの優しさに甘えましょう(笑)。
長谷川くんはおれがジャンプで連載してるときにアシをやってくれてて、仲良しだったんです。長谷川くんもそのあとジャンプで連載するんだけど、そこで石山くんと長谷川くんが出会ったんですよね?
石山:
そうですそうです。ぼくが初アシで、長谷川さんが初連載のときに入って。
年齢も一緒だったしすぐ仲良くなったんです。
ぼくが連載獲って職場を借りるときも、他の場所なんて知らないから長谷川さんの職場から徒歩10分くらいのところに借りたりして。
近藤:
そうそう。
で、長谷川くんがよく自分の家に人を呼んでくれるんだけど、あるとき「石山さんも呼びましょうか?」って言ってくれて。同じジャンプ作家ってのもあったからその繋がりで。そこで初めて出会いました。
石山:
1回目はアレですよ、映画を観にいったんですよ!『マッド・マックス』(※1)。
長谷川さん・Y木さん(※2)・近藤さん・ぼくの4人で。
(※1)『マッド・マックス 怒りのデスロード』
(※2)当時の漫画仲間の1人
会っていきなり、特に話もしないまま映画館にいって。
映画観てる間はまるっきり他人ですよ。初対面だし話したことないし(笑)。
で、その後のご飯で近藤さんとぼくは仲良くなりました。
近藤:
そのあともほんとに長谷川くんの家でよく遊んでましたね。
長谷川くん、部屋がきれいなのでよくお邪魔してました(笑)。
石山:
今日、長谷川さんも呼んだほうがいいんじゃないですか(笑)?
近藤:
いやーーー呼びたかったんですけどね!
だけどそうなると集英社にも声かけなきゃだから…(笑)。
石山:
残念だなぁー。でも長谷川さんの家ではよく遊びましたね。
近藤:
うん、年に2-3回くらいかな?
マンガ家仲間で長谷川くんの家に集まって、絵描いて酒飲んでスマブラして。
石山:
そうそう、絵描いて「誰が一番似てるか?」みたいなのやってた(笑)。
近藤:
みんなで同じキャラを描いたりして遊ぶやつね。あれ楽しかったねぇ。
ー「マッド・マックス」後のご飯では、感想戦で激論を交わして仲良くなったんですか?
石山:
いやぁ…?そんなにマッドマックスの話はしなかった気がする(笑)。
近藤:
(笑)
石山:
なんかカエルの肉を食わされたのめっちゃ覚えてますわ(笑)!
近藤:
新宿のあの店、ですよね。
初対面でいきなりゲテモノ食わされてんのおもしろいなぁ。
ーカエルの肉のインパクトが大きすぎますが(笑)、そのときっておふたりはお互いにどんな第一印象だったんですか?
近藤:
おれは「クールな人やな」って思いました。
石山:
それは初めてで緊張してたからですよ(笑)。
近藤:
それもあったのかも(笑)。
もっと言うと、「クールだけどマンガのことめちゃくちゃ考えてる人だ!」って思いました。
そもそも僕はずっと石山くんに会いたかったんです。彼が描いてた『三ツ首コンドル』がすげぇ面白くて。終わっちゃったけど、終盤に向けてグァーって盛り上げていくのがすっげぇなって。こんなのどんな野郎が描いてんだ…って(笑)。
石山:
うわぁ、ありがとうございます。
竹本:
当時、おふたりはライバルでもあるんですよね?
石山:
そうですね、同じ新人作家としてはライバルと言えると思います。
近藤:
ただぼくらは連載時期もズレてたし、そんなにバチバチ!って感じではなかったかも。
石山:
初めて会ったときにはお互い連載は終わってたから、「同士」感が強かった。多分連載前だったらバチバチしてたと思うんですけど。どっちが先に連載穫るか!って(笑)。
近藤:
やっぱそれだとバチバチしちゃいますよね(笑)。
竹本:
じゃあ例えば「春の新連載! 第一弾・石山! 第二弾・近藤!」みたいな並びだったら?
石山:
それだったらもう殺す気でいきますよね!
一同:
(爆笑)
ー初対面でガッツリマンガ論を交わしてるんですね!石山さんは近藤さんにどんな第一印象を持ったんですか?
石山:
変わらずのこの、純粋さというか。たぶん悪意とか裏でなんか考えるとか、そういうのが一切感じられないような印象が最初からありました。だから警戒心なんて抱かず、最初からなんでも話せちゃいましたね。
とにかくマンガがめっちゃ好きなのもすぐわかりましたし。初対面のときから「一緒にマンガの話をしたい人」って思ってました。
樋口:
それってカエルの肉が出てくるようなご飯のなかでもわかるものなんですか(笑)?
石山:
カエルの肉を出されたときも、ずーっとマンガの話をしてたんですよ。
あの作品があーだ、この作品がこーだって(笑)。
で、そこに近藤さんはめちゃめちゃノって来てくれるんで。
マンガ愛が強すぎて、今みたいに話し出すと止まらないんですよ。
近藤:
マンガとマンガ家がめっちゃ大好きなんです。
おれはマンガオタクがマンガ家になっただけなんですよ。
ふたりがDAYS NEOに投稿したキッカケ
ーおふたりの出会いからだいたい一年後、2019年6月に近藤さんがDAYS NEOに『忍者と極道』を投稿されたのですが、なにかキッカケとかはあったんですか?
近藤:
当時、ジャンプの契約を切られてガクンとなってたんです。
学生時代の先輩で、講談社のラノベ部門で働いてるKってひとがいて、その人が前から「ジャンプでダメだったら講談社で描けば?」って冗談半分で言ってくれてたから、「契約切られちゃいましたアハハ〜」って連絡したらすぐ飲むことになって。
そこで「今ウチでDAYS NEOってサービスはじめてさぁ。そこに出したらいろんな編集部のひとが見てくれるから、出してみたら?」って言ってくれて。「へぇ〜そんなものがあるのかぁ」って、そのとき初めてDAYS NEOを知りました。
で、ちょうど当時ボツになったネームがあったから「じゃあコレ出してみようかな…」って。会議落ちたばっかでヘコんでたからダメ元のつもりで、DAYS NEOに投稿しました。
ーそしたら、コミックDAYS・竹本から担当希望が届いたんですね?
竹本:
読んでみたら面白くて。面白いんだけど改善できるところもあった。だから面白いとは伝えたけど、バキバキに改善点を書いたメッセージを送ったような気がします。
近藤:
メッセージは構成とかの話だったから、そんなバキバキでもなかったかも…?ただ初めて会ったときに「面白いんですけど」って前置きで、バキバキにめっちゃ言われましたね(笑)。
竹本:
そうだったかもです(笑)。
近藤:
色々改善点を言われた気がするけど、一番は「情報がつまりすぎです」って。
確かに「第1話」の時点で4話ぶんくらいの分量がありました。全4話くらいのネームで、単行本2巻ぶんくらいのボリュームだったと思う(笑)。
竹本:
だから「これだと読者は咀嚼できません」って。
設定はもう抜群で、キャラも魅力的だったので、「もう少しキャラにフォーカスして、ストーリーはいったんバラバラにして再構成しましょう」って。でも、それからはめちゃくちゃ早かったですよね?
近藤:
早かった。初めての打ち合わせから連載開始まで半年くらいかなぁ。
半年くらいの間に2回くらい描き直したのかな。
ー出会ってから半年で連載開始…!それから、コミックDAYSの月曜日を背負う作品になっていくわけですね?
竹本:
月曜更新にしたのは、ジャンプマンガより話題にするためだったんです。
石山:
えっ!そうなんですか?
竹本:
そうなんです。
近藤さんにも「『忍者と極道』はジャンプマンガより話題になるから、月曜更新にします」って伝えて。
近藤:
そうでしたね。
石山:
うわぁめっちゃバチバチじゃないですか(笑)。
竹本:
熱いファンに支えられて、今では「休載」も「連載開始」も話題になったりしますし、ほんと近藤さんとファンのみなさんの関係はすごいと思います。
石山:
休載のときの全話開放とTwitterで投稿された「担当メッセージ」がバズってましたけど、めっちゃアツかったですよね?
近藤:
竹本さんはほんと、連載を更に話題にするための施策を毎回考えてくれるし、それがハマってくれるからめちゃくちゃ頼りにしてますね。
ー近藤さんが『忍者と極道』をDAYS NEOに投稿されてから約3年後、2022年5月に石山さんが『龍とカメレオン』をDAYS NEOに投稿されています。石山さんもなにかキッカケはあったんですか?
石山:
やっぱり近藤さんです。近藤さんがDAYS NEOで編集者と出逢って、そこから連載されて、活躍されてる…ってのは聞いていたので。当時、ぼくも同じく契約期間がおわって、アシしながら「自分の作品どうしようかな〜」って考えてたんです。
ただ、近藤さんがお忙しかったのもあってその頃はあんまり会ってなかったんですよね。そんなときにDAYS NEOのことを思い出して。やっぱり手軽だったんで、こっちには特にデメリットもないし、投稿してみるか!って。
近藤:
DAYS NEO、ほんといいですよ。
ほら、1回持ち込みすると結構心削られちゃうじゃないですか?
石山:
わかる(笑)。
そこでマイナスのこと言われたらもうコレだめなんかなってなっちゃう。
近藤:
やっぱり人と人のコミュニケーションだから結構気も遣いますし。
石山:
そうそう。調べて、予約取って、当日行って、それだけで体も心も大変(笑)。
近藤:
実は『忍者と極道』もコミティアでいくつかの編集部に持ち込んだんですよ。
石山:
え、そうだったんですか?知らなかった!
近藤:
たしかDAYS NEOに出す直前くらいだったと思うけど、
持ち込んだのは3編集部くらいかな。めっちゃ疲れたの覚えてます。
竹本:
その時の編集者たちの反応ってどうだったんですか?
近藤:
3編集部とも「忍者はいいけど、極道ウケますかね〜」って言われちゃいました。
石山:
そんな感じで言われちゃったんですか!?
近藤:
そうだねぇ、そのときはどの編集部にも「極道はやめたほうが…」って。
竹本:
えー!忍者と極道だからいいんじゃないですか!
近藤:
だから「極道がイイ」って言ってくれたの、ほんとに竹本さんだけだったんです。
竹本:
忍者と極道、最高なのになぁ。
「おれが考えた最強バトルマンガの設定」って感じじゃないですか。
近藤:
だいたいどこも「極道は流行んないですよぉ、変えたほうが」って反応でしたね。ただ竹本さんは「極道だからいいんです!」って当時から言ってくれてた。
石山:
ですよね、「最強と最強をぶつけたれ!」って清々しいですもん。
竹本:
「ゴジラvsキングギドラ」みたいな(笑)。
近藤:
個人的には忍者と極道って企画には元々自信があって、「コレは面白い!イケる!」って思ってたんです。
友達に「次どんなマンガ描くの?」って聞かれたときに「忍者とヤクザが戦うマンガ」って答えたら大体のひとがブハッて笑ってくれて。「なにそれ!?」って。この一瞬でそれだけ笑ってもらえるんだから、「やっぱりこの企画はインパクトあるな」って思ってました。
竹本:
初期のタイトルの読みは「にんじゃとごくどう」じゃなかったですけどね!
ー連載初期は「しのはときわみ」でしたよね?
石山:
あれ、いつごろ変えられたんでしたっけ?
竹本:
単行本の1巻を出すときですね。ルビは振ってたんですけど、販売部の人に
「”にんじゃとごくどう”って検索すると出てきません」って言われたんです。
それ言われて、まぁ確かになぁ…って。
その時に「読み方変えます!ロゴのルビだけ差し替えます!」ってTwitterで言うところまで画が思い浮かんだんで、近藤さんに「読み方変えましょう」って即TELしました。
近藤:
その電話を受けて、「あ、はい」って。理由も納得しかなかった(笑)。
おれも友達に「今なんてマンガ描いてんの?」って聞かれたときに「忍者と極道って書いて”しのはときわみ”って読むマンガ!」って答えてたので、説明もしやすくなるしいいかなって、即決しちゃいました。
石山:
結果的にこれ以上ないくらいわかりやすいタイトルになったわけですし、変えてよかったですね(笑)。
ー同じ作品でも、編集者によって違う反応になる…という話をいただきましたが、石山さんがDAYS NEOに『龍とカメレオン』を投稿されたとき、すぐに2人の編集者から担当希望が送られてましたよね?樋口さんを選ばれたのには理由があるんですか?
石山:
『龍とカメレオン』で勝負しましょう!って言ってくれたからですね。
僕も『龍とカメレオン』の企画に自信があったし、コレで勝負してみたかった。だから、そこにノってくれる編集者が担当希望を出してくれたのが嬉しかった。
だから、あんまり悩まずに樋口さんとマッチングしました(笑)。
樋口:
投稿されたのもマッチングしたのもGW真っ只中だったんですけど、GW中に編集長に『龍とカメレオン』のURLを送ってましたからね!
石山:
そうそう(笑)。
「上に見てもらったほうがはやい!」って言って。
近藤:
ガンガンJOKER、そのへんフットワーク軽いですねぇ。
樋口:
そうですね!
スクエニの中でもガンガンJOKERはフットワークが軽いです。
その時も編集長に直談判して、最速で連載会議を開いてもらいました。
石山:
そうなんですよ。ぼくもびっくりしました。
編集部って、定期的に連載会議があって、そこで連載作が決まる…みたいなイメージあるじゃないですか。だから、編集長にネームを見てもらっても、連載が決まるまでは数ヶ月かかるんじゃないかなって思ってたんです。
でも『龍とカメレオン』はほんとすぐに連載が決まったんで「マジ!?」って(笑)。連載開始まで、マッチングしてから5ヶ月くらいだったんじゃないかな。
近藤:
それにしても連載まで早いですよね。
そういえばコミックDAYSはそもそも連載会議がないですよね?
竹本:
ですね、クリエイティブの責任者がGOサイン出せば連載です。
いいネームがあがったら見せて「連載しますよね?」って言いに行く(笑)。
近藤:
ジャンプだと数ヶ月ごとに連載会議あったから、驚いちゃいました。
石山:
やっぱり驚きますよね?
え、もう決まったの?嘘じゃないの?ってなりましたもん。
樋口:
作家さんの熱がアツいうちに連載まで持っていきたいですし、なにより作家さんに早く編集部側の反応を伝えたいので、ぼくはいいネームをいただけたら即・直談判ですね(笑)。
実際の連載会議でも『龍とカメレオン』は大好評で、トントン拍子に連載まで進められました。
石山:
ほんとありがたかったですね。
近藤:
『龍とカメレオン』、はじめっからアツくて面白いもんねぇ…。
石山:
ありがとうございます(笑)。
自分でもノッて描けてるとは思いますね。
近藤:
読んでて思うのは、主人公の2人もめちゃくちゃカッコいいんだけどさぁ、普通の奴らの話がほんとに身に沁みるっていうか、マンガ家の苦しんでる話がすっごいリアリティ全開でさぁ!
石山:
(笑)
そうですね、ココ(心臓)に刺さるようにつくってるつもりです。
近藤:
ほんとにさぁ…連載が獲れないとか打ち切りになっちゃう作家の話とかさぁ…!
もうおれ、ほんと読みながら、ほんとさぁ…。
石山くんもおれも2回打ち切られた経験があるじゃない?
「あぁ、おれと同じような地獄を見てきたんだろうな」って、読みながらヒシヒシと感じちゃうんです(笑)。
石山:
そうですね…。
あそこはもう打ち切りを経験されたことのあるマンガ家仲間たちから
たくさんメッセージをもらいました。「刺さりました!」って。
竹本:
そういう作家さんたち、ぜひDAYS NEOに投稿してほしいですね。
近藤:
DAYS NEO、すごいたくさんの編集者がみてくれるからマジでありがたい。自分じゃ気付けなかったいいところも悪いところも教えてもらえるし、いまやもう講談社だけじゃないですもんね。
ーそうですね。DAYS NEOとしては「クリエイターにとってより良いかたち」を追求しているので、「講談社だけがいる場所」よりも「いろんな会社/編集部がいる場所」のほうがクリエイターにとっていいことなんじゃない?って考えて、今のかたちになってます。
石山:
ぼくらとしてはほんとにありがたい話。
もう新人さんはネーム描いたらとりあえずDAYS NEOに出せばいいんじゃないかな?「DAYS NEOから始めてみる」ってめっちゃいいと思います。
竹本:
編集から見てもめちゃくちゃいいですよ。
樋口:
めっちゃくちゃいいです。
竹本:
やっぱり出逢える作家さん、読める作品の数がめちゃくちゃ増えましたもん。
近藤:
作家も編集者もうれしいんだからすごいよなぁ。ほら、持ち込みってなんかさ、作家側が「いかがでしょうか…」っていくイメージありません?
石山:
わかります、顔色窺うときもありますし(笑)。
近藤:
でさ、「うーーーン…イマイチ。」みたいな感じの編集者もいるじゃないですか。
石山:
(笑)
めっちゃ声低い、誰のマネしてるんですか(笑)。
近藤さんからみた『龍とカメレオン』の魅力
ーおふたりがお互いの作品をリスペクトしてらっしゃることはこの対談の読者にも十分伝わったと思うのですが、更に深掘りさせてください!近藤さんからみた『龍とカメレオン』の魅力って、どんなところでしょうか?
近藤:
間違いなく熱量。
マンガを描くのって、地獄だけど楽しいんですよ。その両方をめちゃくちゃ熱量高く、エグって描いてくれるから刺さる。
だからおれは特に、3~4話くらいに登場する中野って打ち切り食らったマンガ家のキャラが好き。いや、主人公じゃなくて完全に凡人枠のやつなんですが(笑)。
もちろんストーリーを牽引するのは花神みたいな超人マンガ家なんですけど。その中で描かれる凡人のリアルな苦悩が、すっげぇ刺さる。「ああ、あるよねこういうの!」って。
ーおふたりはマンガ家なのでもちろんですが、ぼくらの深いところにも刺さりますからね…。読者の方からもそういうお便りって届いたりしますか?
樋口:
アンケートやお便りでたくさんいただいています。
創作の厳しさへの共感もありますし、マンガ創作の裏側を知れる…っていうところを楽しんでくださる方もいます。もう少し拡大して「お仕事モノ」として捉えて、普段自分がやってる仕事と重ねて読んでくださってる方からもお便りをいただくことがあります。本当にいろんな層から反響をもらってますね。
さっき話に挙がった中野というマンガ家キャラのエピソードを読んだ読者からは「かつて自分が好きだった打ち切りマンガの作者の葛藤を知れて、その時好きだった気持ちが報われました。」ってお便りもありました。
石山さんのご経験から出せるリアリティもあるかとは思うんですが、それがあのストーリーで、あの画で作品に落とし込まれてるのがスゴい!って思います。
近藤:
っていうか、画力すさまじく上達してますよね。
いや、ほんと、特に主人公がめっちゃでっかく龍とかのオーラ出したりするじゃないですか。「迫力ヤバ!」って思うもん。めっちゃ磨き込まれてる。
あれってデジタル?アナログ?
石山:
デジタルですね!
近藤:
そうなのか…いやほんとすごいです。描き込みもやばいし。
石山くん、ジャンプの頃から上手かったけど、今も上達し続けてる。だっておれ『三ツ首コンドル』の頃から読んでるからさ!あれからずっと成長し続けてるし、画の成長曲線なんかもうズギャーン!って飛び抜けちゃってますよ。
石山:
そう言っていただけるのは本当に嬉しいです。
特に「龍とカメレオン」はマンガ家の話なんで、画もめっちゃ頑張りたくて。描き込むの自体は楽しいんで、時間の許す限り突き詰めちゃいますね。デジタルにして修正しやすくなったのもデカいです。月刊ってのもありますし、なんとか頑張れてます(笑)。
近藤:
元々スピードもあったし、そこに腕前もどんどんついてきて…
すごいことになってきましたねぇ(笑)。
石山:
ありがとうございます。褒められっぱなしでムズ痒い(笑)。
樋口:
石山さん、いまも一人で描かれてますしね。
竹本:
マジですか。それはすごい…!
近藤:
背景とかも、石山くん一人で描いてるんですよね?
石山:
背景も描いてますね。描くのが楽しくなっちゃう(笑)。
樋口:
毎回、原稿が送られてくるたびに感動すると同時に、いったい1ヶ月の時間をどうやってつかってるんだろうと首をかしげています(笑)。
一同:
(笑)
近藤:
『龍とカメレオン』、1話あたりのページ数ってだいたいどれくらいでしたっけ?
石山:
だいたい40ページくらいを目指して、って感じです。
近藤:
うわぁ、背景も含めて1ヶ月で40ページか…すっげぇなぁ。
おれ背景一切描けないから、アシスタントさんがいないとおれの作品は成立しない…(笑)。
石山:
近藤さんっていまもアナログですか?
近藤:
キャラペンまでアナログでやって、あと炎とかのエフェクトは可能な限り自分で描くんだけど、そこからの作業はデジタル。おれがアナログで描いたものをスキャンしてスタッフさんに渡して「背景おなしゃす!」って(笑)。
石山:
じゃあ近藤さんご自身はデジタルには一切触らないって感じです?
近藤:
仕上げのときに効果音とか飛沫を飛ばしたりするときはデジタル。
左虎ってキャラがバトルで糸を使うんだけど、その糸もデジタルのほうが速かったからデジタルでやってました(笑)。
石山:
やっぱり自分で描かなきゃ気がすまないとこってありますもんね。
近藤:
そうそう!人に助けてもらいつつも、どうしても自分で描きたい!ってところはありますね。「ココに飛沫が1つピッ…って入ってるのがいいんだよ!」みたいな(笑)。
石山:
そういうレベルのこだわりになると自分でやるしかないですよね(笑)。
近藤:
あとは、顔がでるキャラは全部自分で描く。
モブだけどヤクで顔がキマってるキャラとか。
石山:
あの顔は近藤さんじゃなきゃ描けないですよ!
近藤:
動きで個性を出すっていうか、ポージングが個性になってるキャラとか、そういうのはやっぱり自分で描かないと満足できないです。
石山:
そうですよね、アレは「苦しんでる表情と姿勢のキャラを描いてください」…ってお願いだと再現しきれませんもんね。
近藤:
あとはホラさ、画の中にこっそり小ネタを入れたいときとかね…?
竹本:
近藤さんのはぜんぜん「こっそり」になってないんですよ(笑)!
近藤:
今はジャンプ時代と比べたらだいぶ大人しくなったんですよ…。
昔は有名女児向けアニメのキャラを背景にちょっと描いてたら、担当から「世界観壊すからやめろ」って怒られたこともありますもん。
石山:
いやアレ結構目立つ感じでしたよ(笑)?
竹本:
ただそういう小ネタに読者が気づいてくれて、SNSとかで言ってくれるのは嬉しいですね。読者と良好なコミュニケーションがとれているというか。
ー背景の書き込みの話も小ネタの話も、「読者をどれだけ楽しませられるか」というホスピタリティだと感じました。読者のために、おふたりがどれだけのこだわりを作品に詰め込んでるのか…というのが伝わってきますね。
近藤:
純粋に描くのが楽しいですね。
余計なことかもしれないけど、そこまで描くのが楽しいっていうか。
石山:
楽しんでもらいたい!すげぇ!って思ってもらいたいのもそうなんですけど、読者に「あ、コイツ手抜いたな」って思われたくないのもありますね(笑)。
近藤:
あ!それもあります!
石山:
だからどんどん気が抜けなくなっていく…(笑)。
近藤:
連載が続いていくと、それがどんどん積み重なっていくんですよね…。
石山:
いやぁ、ほんとマンガって最高ですねぇ!
ー「龍とカメレオン」2巻でも、5人の作家キャラの作品を、5作品ぶん作風変えて描いてらっしゃるじゃないですか。あれもすごいこだわりだなって思いました。
石山:
描きましたねぇ。あれは完全に樋口さんのアイデアで、「単行本、おまけページあるんでどうすか?」って(笑)。
竹本:
あれほんとに最高です。めっちゃおもろかったです。ぼくだったらどのマンガを一番読みたいかな?って思っちゃった。
石山:
うわーありがとうございます、描いてよかったです。
樋口:
読者が一番喜んでくれるおまけページって、「2巻ならやっぱり作中作だよなぁ」って思いついてしまって、提案しちゃいました。読者の方にも喜んでもらえていて、本当にありがたいですね。
竹本:
しかも相当ガッツリ描かれてますよね。1作品あたり4コマくらい。しかも全部の作品にタイトルロゴもあって。すごいつくり込まれてました。
近藤:
作中作ってマンガ家マンガの醍醐味みたいなところありますもんね。
石山:
そうですね。
作中ではなかなか出すタイミングがなかったので、おまけページで楽しんでもらえれば…って思ってました。ほんと頑張ってよかった。
竹本:
近藤さんもおまけページにはすごいこだわりがありますよね?
石山:
近藤さん、単行本のおまけページめっちゃ凝りますよね(笑)?
樋口:
ぼく、『忍者と極道』の単行本カバー外したところ、めちゃくちゃ好きです!
近藤:
元々はマンガを描くよりも文章のほうが速いだろって思ってやってたら、だんだん大変になってきちゃって。次の巻(12巻)でも文字いっぱい書いちゃって。
毎回できる限り違うパターンがいいなって思って、新聞っぽくしてみたりwikipediaっぽくしてみたり。
竹本:
12巻のおまけページも相当面白いですよ。
近藤:
また文字をいっぱい使うんだけど、まだやったことないやつをやりました。
竹本:
デザイナーさんがいつも快く引き受けてくれるのでほんとありがたいです。
毎回同じフォーマットでやったほうが楽は楽なんですけど、デザイナーさんのおかげで近藤さんのこだわりが表現できてます(笑)。
石山さんからみた『忍者と極道』の魅力
ー石山さんからみた『忍者と極道』の魅力ってどんなところでしょうか?
石山:
さっきちょっと触れたんですけど、キャラの死に様が超カッコいいのと、バトルのクライマックスにそれをちゃんと持ってきてくれるところ。
やっぱ最強と最強、どっちも魅力的なキャラ同士で戦うから、そりゃもう見てて面白いよね!って思わされますね。あれをずっとやってくれるんだろうし、だからこそずっと面白いんだろうし、信じて安心して読み続けられちゃいます。
ー『忍者と極道』、読んでてこう…中毒性がすごいですよね?
石山:
中毒性、わかります。
バトルの最後に気持ちよくさせられてる感じとか、麻薬みたい(笑)。
どんどん漬け込まれてる感じですね。
竹本:
編集目線でいうと、様式美を大事にしてるんですよね。最強vs最強なので、インフレをどう起こさせないか…ってとこと、結局「最強vs最強」ってフレームをどれだけわかりやすくするかってとこ。
あとは「首が飛んでから本番!」ってとことか(笑)。
読者がただ楽しく読めるように、そういうフレームは大事にしてます。
石山:
格闘もめっちゃカッコいいんですけど、それはバトルのクライマックスじゃないっていう。どんなカッコいいバトルでも、最後は死に様でバトル以上に魅せて…ってやってくれるので、最後まで美味しい。良い構成だなぁって思います。
樋口:
嫌な敵キャラがでてきたとしても、最後にはこいつのバックボーンも明らかになってまたアツい気持ちにしてもらえるんだろうなぁ…って信頼があります。新キャラが出てくるたびに楽しみになっちゃいます。
石山:
そうそう!変な新キャラ出るたびに「こいつどんなバックボーンのやつなんだろ!?」って。どんどん変なやつ出てこい!…って思っちゃう(笑)。
竹本:
すべてのキャラの死に様に思い入れがありますが、ぼく的には艶道の最期が今のところ一番好きです。
ある意味で11巻かけて紡いできた様式美をぶっ壊してるシーンなんですけど、それだけの説得力を持ったキャラの登場シーンでもあるので。最高ですね。
近藤:
あいつは最強格の一人なので、それくらいやれちゃいましたね。
石山:
ぼくは首相!愛多間七がめっちゃ好き。
ガムテと間七のシーンが好きなんです。間七とのやり取りの中で、ほんの一瞬、ガムテが揺らぐとこ。忍者じゃない一般人が、あのまっすぐさだけであのヤバすぎるガムテを一瞬揺らがせるシーン、最高です。
近藤:
ガムテのところは「一般人も頑張る話」を描きたかったんです。
その象徴的なシーンとしてガムテと間七のシーンを描いたんですよ。
石山:
ガムテって、作中でずっとイカレっぱなしじゃないですか。そんなやつにあんな表情させるの、ズルいっすよ!
近藤:
あれはもうキャラが勝手に動いてくれたとこでしたね。
間七ならこうするだろうって。
竹本:
グラスチルドレン編なら、大統領もいいキャラだったなぁ…。
近藤:
大統領はもう「これが本場のfxxkだ!」って相手の目に中指を突き立てるシーンが
頭に思い浮かんで、「これめっちゃカッコいい!」って生まれたキャラですね。
竹本:
あのへん僕もネーム読んでて毎回爆笑してましたね。イカれてんなぁって(笑)。
石山:
描いてるときもめっちゃ楽しそうですね(笑)。
樋口:
打ち合わせもすごい楽しそうです(笑)。
近藤:
打ち合わせのとき、たまに竹本さんポカーンとしちゃうんです。
「え、どゆこと?」みたいな。で、マンガに描くと「あぁ、なるほど」って。
竹本:
近藤さんが無垢にとんでもない発想をしてくれるから、言ってることの意味がわかんないときもありますね!でも近藤さんを信頼してるので、そうなったときは
「とりあえずネームで見てみてもいいですか?」ってお願いしちゃいます。
近藤:
頭の中にはもう面白い画ができあがってるんですけど、
やっぱり口で伝えるのって難しいですよね(笑)。
石山:
口で伝えるの、難しい(笑)。
そんなときでも画で伝えられるのがマンガ家のいいところですね!
ー…と、トークが盛り上がりすぎてしまって、気がついたらもう80分も経ってしまいました。このままだとサインを描いていただく時間がなくなってしまうので、残念ですがココで対談は終了とさせてください…! おふたりとも、本日はお忙しいところお越しいただきありがとうございました!
石山:
うわ、もうそんなに経ってたんですか!
こちらこそ久々に近藤さんとお話できてめちゃめちゃ楽しかったです。ありがとうございました!
近藤:
ありがとうございました。楽しかったなぁ。
終わっちゃうの早いなぁ、全然話し足りない。石山くん、またご飯行きましょう。
石山:
ぜひ。そのときは長谷川さんたちも呼びましょ(笑)!
『忍者と極道』と『龍とカメレオン』
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