それはDAYS NEOから始まった #19 『セフり、ソフられ。』山田やな先生×担当編集インタビュー

それはDAYS NEOから始まった #19 『セフり、ソフられ。』山田やな先生×担当編集インタビュー

マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から連載に繋がった作者と作品を紹介する「それはDAYS NEOから始まった」、第19回!

今回は2021年8月にヤングアニマル編集部・勝葉(以下、勝葉)とマッチングし、現在コミックシーモアにて『セフり、ソフられ。』を連載中の山田やなさん(以下、山田)にインタビュー。

山田さんのマンガづくりへの真摯な姿勢、それを支える編集者の作品愛。物語の構成・キャラクターメイクについても詳しくお話しいただきました!

「このまま少女マンガを描いていくのか?」と悩んでDAYS NEOに投稿した

―DAYS NEOにご自身の作品を投稿しようと思ったキッカケを教えてください。

山田:
友人から勧められたことがキッカケで、前作『すきときす』の連載が終わったタイミングで作品を投稿しました。

当時、「今後も少女マンガのジャンルで描いていくことが自分に合っているのだろうか」と悩んでいたんです。少女マンガでは「ヒーローが格好よく描かれていること」がとても重要だと思います。でも、私はかわいい女の子を描くことが大好きで。『すきときす』の完結後、格好いいヒーローよりも可愛いヒロインを描きたい!という気持ちが大きくなってきて。

それで、「このまま少女マンガを描いていくのか?」「どんな読者さんに届ける、どんなマンガを、どこで描くのが自分には合っているのか?」って悩み始めたんです。その悩みを仲の良い作家さんに相談したら、DAYS NEOの利用を勧められました。

DAYS NEOは本当にいろんな編集部の編集者さんが作品を読んでくださるので、「少女マンガ」という枠に囚われずに作品を評価していただけます。今後の作品の方向性に悩んでいた私にとっては、とてもありがたいサービスでした。

―勝葉さんから事前に『お姫様にはなれない』(DAYS NEO投稿作。現在は削除済)と設定資料をいただいたのですが、設定資料もDAYS NEOに投稿されていたんですか?

山田:
『お姫様にはなれない』がネームの状態だったので、設定資料も一緒に投稿しました。WEBTOONのマンガはカラーで読まれるのが基本なので、ネームだけだと編集者さんに伝わりづらいかなと思ってカラーの設定資料をつけました。

『お姫様にはなれない』の設定資料。
キャラクターの全身画と色設定が記載されている。

勝葉:
もちろんネーム状態の投稿でも作品の面白さは伝わるのですが、作画力をイメージできるので設定資料などをつけていただけると編集者としてはとても助かりますね。

「可愛い女の子」と「色彩感覚」に魅力を感じて担当希望を出しました

―読み手(編集者)のことを意識して投稿してくださっていたんですね。それでは勝葉さん、『お姫様にはなれない』を読んで山田さんに担当希望を出した理由を教えてください。

勝葉:
実は、巡り合わせがよかったんです(笑)。

山田さんとマッチングする少し前、ヤングアニマル編集部がWEBTOONの常設連載を目指すべく「WEBTOON制作チーム」を創設しました。私も創設メンバーとしてそこに加わることになったのですが、チームの誰もWEBTOON制作の経験がなくて。どうしたものか…と頭を悩ませていました。

山田:
そうだったんですね!

勝葉:
はい。そんな時にちょうどヤングアニマル編集部がDAYS NEOに参加することになり、そこで『お姫様にはなれない』を拝読しました。

『お姫様にはなれない』を読んで、「女の子の可愛さ」と「作品全体の色彩」がとても魅力的だと思いました。当時、知見がないながらもWEBTOONでは「色遣い」が重要だと考えていたんです。女の子の可愛さに加え、WEBTOONならではの要素として、山田さんの色彩感覚とそれを作品に落とし込める画力に強く魅力を感じました。しかもご経歴を拝見すると、WEBTOONの連載経験がおありとのこと。「願ってもないタイミングだ!」と思って担当希望を出しました。

『お姫様にはなれない』より。
海中から海面を見上げる構図を巧みな色遣いで表現

「新たなジャンルへの挑戦」に惹かれた

―山田さん、勝葉さんとのマッチングの決め手はなんだったんですか?

山田:
実は、勝葉さんから担当希望をいただいてすぐ、マッチングすることを決めました。悩んだり考えたりもせず、即決でした(笑)。

理由はふたつあります。ひとつ目は、「次に声をかけてくれた編集さんと一緒にやる仕事を最後にしよう」と考えていたこと。DAYS NEOでも一番最初に声をかけてくれた方とご一緒したいと思っていました。ふたつ目が、勝葉さんが青年マンガ編集部の所属だったこと。今後も少女マンガを描き続けていくべきなのか悩んでいた私にとっては、新たなジャンルへの挑戦という意味ですごく惹かれました。

さきほど勝葉さんが「巡り合わせがよかった」と仰っていましたが、私も同じだったんです。

勝葉:
そうだったんですね…巡り合わせに感謝です。

山田さんがスクショを撮ってくれていたので自分が送ったメッセージを読み直したのですが、やっぱり「女の子が可愛い」と「色遣いがきれい」って伝えてますね(笑)。マッチングできてよかったです。

DAYS NEO上での勝葉さん→山田さんへのメッセージ。
※山田さんからご提供いただいた画像。

―マッチング後のお互いの印象はいかがでしたか?

勝葉:
……僕からでいいですか?(笑)

山田:
ふふ(笑)。はい、お願いします。

勝葉:
山田さんと最初にお電話でお話した時に「誠実に仕事をされる方なんだろうな」と思いました。編集者として多くの作家さんとやりとりをするのですが…「しっかりしている感」が頭ひとつ抜きん出ているんですよね。このインタビューのお話しぶりでも伝わっていると思うんですけど、日頃の言動もすごく丁寧な方で。この方とご一緒したら、きっと良い作品づくりができると感じました。

山田:
ありがとうございます。

勝葉さんは「マンガが大好きで、マンガへの情熱をまっすぐに伝えてくれる方」というのが第一印象です。それまでは編集者歴の長いベテランの編集さんにひっぱってもらう形で作品づくりをしてきたので、自分より年下の編集さんについていただくのは初めてでした。そんななか、「女の子が可愛い!その絵柄が好きなんです!」「色遣いが綺麗!」と情熱的に伝えてくれたのが印象的です。

ー「可愛い女の子を描きたい」山田さんにとっては、こだわりに共感した最高の誉め言葉ですよね。

山田:
はい。マンガ家と編集者という、一緒に仕事をする関係ですが、勝葉さんは私のマンガに対して「編集者」と「ファン」の両方の側面で話をしてくれているのが伝わってきました。それがとても嬉しくて、ぜひこの方と一緒に作品をつくってみたい!と思いました。

勝葉:
インタビューを受けるにあたって、過去の作品から『セフり、ソフられ。』の最新話まで読み返しました。今とは絵柄が変わっている部分もありますが、全作品の全キャラクターが可愛く描かれているなあと思います。山田さんの描く女の子、本当にみんな可愛いんです。

ここまで青年向けに振り切った作品になるとは思っていませんでした

―『セフり、ソフられ。』はかなりセクシーな描写が多い作品ですよね。マッチングされた当初から、「ガッツリ青年向け」の作品をつくってこられたんですか?

勝葉:
当初は山田さんの少女マンガ作品の経験を活かしつつ、『セフり、ソフられ。』よりも恋愛要素の強い作品をつくっていこうと思っていました。

当時、『サレタガワノブルー』という不倫をテーマにしたマンガが話題になっていたんですよね。女性向けジャンルで描かれた作品ですが、多くの男性読者も獲得していた。山田さんの美しい絵で、もつれた人間関係を題材にしたマンガを描いてもらえたら男性読者にも読んでもらえる恋愛作品になるのではないかと思ってはいたのですが…まさかここまで青年向けに振り切った作品になるとは思っていませんでした(笑)。

山田:
(笑)。

―実際に『セフり、ソフられ。』はコミックシーモアの「青年向け」にカテゴライズされていますが、絵柄や題材を考えると性別問わず楽しんでもらえる作品だとも思います。実際の読者層はどうなんでしょうか?

勝葉:
青年向け作品として配信をしているので、現時点では男性読者が多いです。ただ、コメントをくださる方のなかには、女性読者もいらっしゃるんですよ。白泉社内でも、絵柄の綺麗さや作品の題材から「絶対女性ウケする」という声も挙がっています。現在はシーモアさんで独占配信中ですが、ヤングアニマルから配信する際には女性読者も意識してプロモーションしたいですね。

―近年、マンガ作品は年齢や性別の垣根を超えたものが増えてきていますよね。『セフり、ソフられ。』はまさにそんな作品になっているんだなと思いました。

山田:
ありがとうございます!そうなったら嬉しいです!

山田さんの強みと勝葉さんの「推し」が『セフり、ソフられ。』をつくりあげた

―マッチング後から『セフり、ソフられ。』の連載開始までの歩みを教えてください。

山田:
これまで連載提案をしたのは『セフり、ソフられ。』を含めて3作品です。1作品目はDAYS NEOに投稿した『お姫様にはなれない』を元にした作品でしたが、残念ながら通りませんでした。

勝葉:
2作品目は山田さんの魅力である「可愛い女の子」をたくさん登場させるために、学園ハーレムものを描いていただきました。学園ハーレムならいっぱい女の子を描けるぞ!という魂胆です(笑)。

山田:
ただ、『セフり、ソフられ。』ほど青年向けではありませんでしたね(笑)。

2作品目を連載提案したとき、「もう少しインパクトが必要」というフィードバックを受けたんです。それでハーレムのなかのキャラを深掘りしていこう!となったんですけど…。実はこの作品のなかに歌恋ちゃんが登場していて、勝葉さんが他のどのキャラクターよりも歌恋ちゃんを推してくれたんです。キャラの見た目がすごく可愛いと言ってくださっていました。

『セフり、ソフられ。』より。
小悪魔っぽく上目遣いの歌恋。

勝葉:
(笑)。僕の推しだったのもあって、山田さんに「歌恋ちゃんをもっと深掘りできて、インパクトも強い作品をつくりましょう!」と提案しました。その方針が決まってからも、話の展開は紆余曲折ありましたね。最終的に僕の知り合いの実体験をエッセンスにして話を組み立てていって、現在の『セフり、ソフられ。』の形になったんです。

―望と歌恋のような関係を体験されているお知り合いがいらっしゃるとは…。ちなみにその方は男性・女性どちらなんですか?

勝葉:
男性です。山田さんと相談して、主人公の男の子を「優しさゆえに女の子に振り回されるキャラクター」にしました。歌恋ちゃんの奔放さ、いわゆる魔性の女のような要素も、知人の話を参考にしてつくっていったんです。そして対になる女性キャラクターとして、献身的で主人公を一途に想ってくれる美森先輩が生まれました。

『セフり、ソフられ。』より。
望を一途に想う美森先輩。

山田:
お話を伺った時は、本当にそんな方がいるんですか?と言ってしまいました。私の周りではあまり聞いたことがないので…。

勝葉:
そうですね、どの人の周りにもあんまり居ないと思います(笑)。

「セフレ」と「ソフレ」は概念として、十分認知されるようになってきました。対極にある概念を主軸に物語を組み立てたことで、歌恋ちゃんと美森先輩のキャラクターの対比も際立ちます。それぞれのキャラクターの個性が確立されたこともあって、『セフり、ソフられ。』は連載をとれたのだと思っています。

山田さんは“鉄人”です

―連載会議を通過してから連載開始まで、どのくらいの期間がかかりましたか?

山田:
2年ほどだったと思います。

勝葉:
WEBTOONは性質上、ある程度ストーリーのストックが溜まってから連載開始します。なので横読みのマンガに比べると、連載が決定してから連載が始まるまでは時間がかかるんです。『セフり、ソフられ。』に関して言えば、20話分を連載前に用意していただきました。

―すごい話数ですね。

勝葉:
加えて『セフり、ソフられ。』のクレジットを見ていただきたいんですが…。なんと、「山田やな」さんお一人なんです。

―フルカラーのWEBTOONをおひとりで制作されているんですか!?

勝葉:
驚きますよね(笑)。

山田:
もちろんアシスタントさんにたくさん力を貸していただいています!

勝葉:
とはいえWEBTOONはスタジオ制で分業されていることがほとんどのなか、山田さんはほぼ一人で作業を完結されています。まさに、鉄人なんです。

山田:
鉄人…(笑)。

勝葉:
分業制作だと、当たり前ですが線画・着彩はそれぞれ別の人が作業することになります。『セフり、ソフられ。』は山田先生が一気通貫で制作されているので、DAYS NEOで一目惚れした線画や着色の美しさの感動がそのままに、完成原稿になるんです。そこが、この作品ならではの良さだと思っています。

山田:
前作も1人で制作していたと伝えたら、驚いていらっしゃいましたよね。

勝葉:
はい。僕も「お一人でつくっているんですか!?」と衝撃を受けました(笑)。実は写植作業(※吹き出しのサイズ・セリフの文字量を元に、フォント・文字サイズ・行間・字間などを決める作業)もほとんど山田さんにやってもらっています。

『セフり、ソフられ。』より。
フルカラーだからこそ表現できるグラデーションのかかったモノローグ。

―写植作業もですか!?

勝葉:
はい。だから鉄人なんです(笑)。山田さんにとってはかなり大変な部分があると思いますが「作家がすべて一人で作業を行っている」ところが、他にはない強みだと思っています。本当に頭が下がります。

山田:
とんでもないです。好きにやらせてもらえて、楽しいです。ありがとうございます。

―作業量は非常に多いと思いますが、どういったスケジュールで制作を進められているんですか?

山田:
ネーム・線画までを1週間で行い、その後の着色補助などを1週間でアシスタントさんにお願いしています。最後の3~4時間で、仕上げと写植作業を行っています。2週間で1話ができるイメージですね。

―そのなかでも特に好きな作業工程はありますか?

山田:
個人的には線画が一番好きです。柔らかそうな髪の毛・触り心地の良さそうなほっぺた・体のラインのような、柔らかさを表現する曲線を描くことにこだわりがありまして。そこを極めたいと思っているので、線画が楽しく描けていますね。

『セフり、ソフられ。』より。
山田さんこだわりの曲線で歌恋のボディラインを描いているシーン。

異性の読者に届ける難しさを感じています

―前作は少女マンガ、今回は青年マンガでの連載ということで読者層が大きく変わったかと思います。作品づくりにおいて、心がけたことはありますか?

山田:
はい。特に前作は小学生~中学生の女の子向けに作品づくりをしていました。今回は青年向けマンガなので、ターゲットは20~30代男性。性別も年齢層も全く違います。勝葉さんは「今のままでも男性が可愛く感じる絵だと思う」と言ってくださって、それも嬉しかったんですけど。より多くの男性に見てもらえたら嬉しいなと思い、少年・青年マンガをたくさん読んで、研究をしました。

勝葉:
絵柄が少し変わったのもその影響ですかね?

山田:
そうですね!特に『To Loveる -とらぶる-』(漫画・矢吹健太朗/脚本・長谷見沙貴)と『彼女、お借りします』(宮島礼吏)を参考にさせていただきました。

勝葉:
特に『To Loveる -とらぶる-』は世代によってはバイブルですよね。

―私は世代ど真ん中なので、もちろんバイブルです。

山田:
やっぱりそうなんですね(笑)。

『かのかり』も女の子の解像度がすごく高いと思っています。「こんな女の子いるよね」と女性同士で盛り上がれる作品なんです。そんな風にキャラクターの性格までつくりこめたら、と思っていました。

勝葉:
「共感を生むこと」はマンガは縦読みでも横読みでもとても重要です。そのつくりこみの甲斐あって…いや、僕としては複雑ではあるのですが(笑)、僕の推しの歌恋ちゃんを脅かす勢いで美森先輩が人気なんです。「こんないい子を選ばないなんて勿体ない」と論争が巻き起こっていて、なんとまとめサイトまでつくられています。

そして現在ありがたいことに、コミックシーモアさんの青年マンガランキング・WEBTOON部門で第2位(※インタビュー時点)をいただいています。

(※DAYS NEO運営より:2024年7月4日、『セフり、ソフられ。』はコミックシーモア 総合・男性向けランキングで第1位を獲得)

―「こんな子がどこかにいるかもしれない」と思わせられるキャラクターづくりが、人気に繋がっているのですね。

勝葉:
もちろん第一の魅力は山田さんの描く女の子の可愛さだと思っていますが、ストーリーも山田さんと二人で苦心しながら何度も練り直したので、嬉しいです。「俺はこっちのヒロインのほうがいい」みたいな討論をしていただいているのが、人気の一助になっているのではないかと思います。青年マンガ部門全体で最高は11位(※インタビュー時点)なので、これからも頑張っていきたいです!

―電子書店でのランキングも絶好調の『セフり、ソフられ。』ですが、連載をしていくなかで楽しいこと、難しいことを教えてください。

山田:
私の「女の子を描きたい」という願いを叶えてくれる作品とジャンルに出会えたことが嬉しいです。可愛い女の子を描くことに集中できるので、とっても楽しいんですよ(笑)。

勝葉:
山田さんが楽しそうで何よりです(笑)。

山田:
一方で、異性の読者さんに届ける難しさを感じています。

先ほどマンガでは共感が大切、というお話がありましたが「どうやったら男性の読者さんに共感してもらえるだろう」というのは、女性作家である私にとっては悩みどころです。やはりどんなに男性向けの作品を読んでも補完できない部分があるので、勝葉さんからの助言にかなり助けていただいています。いかに主人公の望くんの行動・感情に共感してもらえるか、一緒に悩んでもらっています。

勝葉:
男性に読んでもらうときには、望くんの視点に立って「自分だったらこっちの子を選ぶ」のように、自分事として捉えてもらうことが重要だと思っています。そのためには望くんの気持ちをきちんと描写すべきシーンと、語らせ過ぎないほうが逆に伝わるシーンがあると思っているので、山田さんと相談しながら、その辺りのバランスを調整しています。

―コメントに「読んでいて胸が痛い」とありますが、お二人の努力によって生み出された共感なんですね。

勝葉:
そうだったら嬉しいですね。読者の方は「望くんが悩み抜いた末に出す答え」を気にしてくれていると思うので、今後も慎重に、山田さんと話し合いながら進めていきたいです。

新しい作品をつくるときは、前作より何か成長していたい

―マンガを描くうえで意識していることや、こだわりを教えてください。

山田:
読者さんあっての作品だと思っているので、「読者さんに伝わる作品になっているか」というのは常に意識しています。ただ「可愛く描く」だけでなく「可愛さが伝わる絵」になっているか、主人公の気持ちに共感してもらえるようなセリフやストーリー展開になっているかを考えながら描くようにしています。

また、自分のなかでは、次の作品を描く時には前回から何かひとつでも進化していたいと思いながらマンガ制作に臨んでいます。『セフり、ソフられ。』で言えば、「セクシーな女の子を描く」というのは私にとって大きな挑戦でした。できることを1つずつ増やしていって、よりよい作品づくりにつなげていきたいと思っています。

―『セフり、ソフられ。』の連載にあたって少年・青年マンガの研究をされたのも、そういった理由だったのですね。

山田:
そうですね。「青年誌レーベルから作品を出す」ということ自体も、「読者さんに伝わる作品かどうか」を意識する大きなきっかけになりました。ネームをつくったあと、勝葉さんとストーリー展開の打ち合わせをすると、意見が割れるんですよ。「恐らく多くの男性は、こんな反応をすると思いますよ」とか、逆に「こうは言わないんじゃないかな」とか。そういうやりとりを重ねていくなかで、「私が描いた望くんでは、多くの男性読者に届かないのかもしれない」という視点が生まれました。

勝葉:
僕からは、主人公の望くんと同じ性別の人間として山田さんにお話しできることがあると思います。逆に言えば、二人のヒロインのキャラクター性や行動に関しては、山田さんの女性としてのご意見がとても重要だと思うので、そのあたりを意識した議論をしています。

山田:
はい。女性作家である私が、青年誌レーベルの作品を、男性の編集者と議論しながら、自分の価値観とは異なる意見を取り入れながら連載している。これ自体、私にとっては挑戦ですし、進化だと思います。貴重な機会をいただけてありがたいですね。

―編集者とのやりとりで新たな視点を取り入れた、というとても素敵なエピソードですね!逆に編集者として勝葉さんが心がけていることはありますか?

勝葉:
僕は編集者としてあまりキャリアが長いわけではないのですが、始めの頃と最近では少しずつスタンスが変わってきています。最初は作家さんに対して「こんな作品をつくってほしい」と明確にお願いさせていただくタイプでした。今は「作家さんが持っている想いや考え」を尊重してディレクションしていきたいと考えています。

―何かきっかけがあったんですか?

勝葉:
実は山田さんとのエピソードなのですが「歌恋ちゃんのセクシーさをもう少し出してほしい」とお願いしたことがあって。僕は編集者で絵が描けないので、漠然としたリクエストしかできなかったんです。

そんな具体性の低いリクエストに対して、山田さんはご自身で描き直したり友人とお話されたりして「もっと歌恋の胸を強調する描写にしたい」とご提案くださったんです。何気ない1シーンの描写を少し変えることで、大きく印象が変わりました。山田さんご自身で「こちらの描きかたのほうがいい」と検討を重ねて提案くださったことが、今のキャラクターの人気につながっていると思います。
これが「作家さんを信頼してお任せすること」の重要さを学んだきっかけですね。

こんな経験を経て、作家さんのご提案は自分なりに咀嚼したうえで尊重していく、というのが自分のモットーになっています。

―素敵なお話をありがとうございます。お二人が一緒に作品をつくっていくなかで、お互いに新たな気づきがあった、という完璧な締めでした。

勝葉:
恐縮です(笑)。

―お二人とも連載中のお忙しいなか、ありがとうございました!

山田:
こちらこそありがとうございました!

勝葉:
ありがとうございました!
望・歌恋・美森先輩の三角関係から目が離せない『セフり、ソフられ。』は、現在コミックシーモアにて先行限定配信中です。作品への応援コメントもお待ちしております!
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