※この記事は、2022年7月13日に公開したものを再掲載しています。
マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から連載に繋がった作者と作品を紹介する「それはDAYS NEOから始まった」、第11回!
今回は少し毛色を変えて、「DAYS NEO」の兄弟サイト「ILLUST DAYS」で開催した「MANGAオーディション 〜樹林伸プロデュース〜」から連載を勝ち取り、現在「なかよし」で『ギフテッド』を連載中の作者・雨宮理真さんにインタビュー!
オーディション開催の裏側、連載に至るまでのプロセス、実際に連載が始まってからのアレコレを、担当編集者である なかよし編集部・白土氏同席のもと語っていただきました!
作品紹介

『ギフテッド』 原作・天樹征丸/漫画・雨宮理真
警視庁の若きホープ・天草那月は、ある日不思議な高校生・四鬼夕也に出会い興味を抱く。通りすがりの夕也は、複雑な殺人事件の犯人をいとも簡単に当ててみせた。一体なぜ彼には犯人がわかったのか――。四鬼の高校で事件が起こったことで、二人は再び巡り合い……。
『金田一少年の事件簿』・『BLOODY MONDAY』の大ヒットメーカー・天樹征丸が描く期待の新作! ある秘密を持つ高校生と若き天才警察官の、本格バディものミステリー。
『ギフテッド』チームの紹介

『ギフテッド』 漫画担当。2014年、漫画雑誌「ARIA」にてデビュー。
連載作は「DEATHペディア」全3巻、「女神の妄想」上下巻。

『ギフテッド』原作担当。漫画原作者・小説家・脚本家。漫画編集者として『シュート!』・『GTO』などに携わる。
原作者として『金田一少年の事件簿』・『BLOODY MONDAY』・『サイコメトラーEIJI』など大ヒット作を多数手がける。

『ギフテッド』担当編集者。入社後、書店営業、ライツ関連の部署を経て、
なかよし編集部では通算7年目。
「Nizi Projectみたいなのやりたいね」から始まった
―「MANGAオーディション」はどのような経緯で企画されたんですか?
白土:
樹林さん(原作者・天樹征丸氏)から『ギフテッド』の原作をいただいたとき、「既存のなかよし作家さんたちの枠に囚われず、もっと広く大勢のクリエイターと出会ったうえで作画担当者を決めたい」と思ったんです。
そこで、「DAYS NEO」「ILLUST DAYS」のクリエイターの幅広さに期待して、コンテスト形式でやろう! と考えました。
―「MANGAオーディション」は特設ページをつくったり複数審査(1次-2次-3次)を設けたり、かなり話題性も意識されていましたよね?
白土:
コンテストの企画を詰めていく中で、樹林さんと「通常のコンテスト形式ではなくNizi Projectみたいな感じでやりたいね」という話が挙がったのがキッカケです(笑)。運営側の負担も大きくなるアイデアではあったのですが、とても素敵なクリエイターがたくさん集まってくれたんです。
現在もこのオーディションで出会ったクリエイターを5名ほど担当させてもらっていますし、オーディションとしても大成功! でしたね。


樹林氏による講評を添えた結果発表が行われた
「自分のマンガ家人生にプラスしかない」と思って応募へ
―…ということで始まったオーディション、率直にどう思われましたか?
雨宮:
なかよし本誌のページでオーディションのことを知ったときは「おもしろそうなことやってるなぁ」と思ったのですが、他誌で連載中だったこともあって応募するかどうかは悩んでいたんです。
ただ、「樹林先生に自分のイラストやネームを見ていただけるような機会は滅多に無い!」「どんなコメントを貰ったとしても、たとえ貰えなかったとしても、自分のマンガについて考えるよいキッカケになる!」と思って応募を決めました。
「コレは大変なことになったぞ」と思いました
―応募された後、1次→2次→3次…と審査が進んでいく過程はいかがでしたか?
雨宮:
率直に、勉強になりました。他の応募者の方の作品を拝見して「こういう見せ方があるんだ」という気付きを得られることはもちろん、ネームを作成するときにも「他の人と差をつけなきゃ」という気持ちが生まれて、すごく良い刺激を貰うことができました。
白土:
実は、1次審査の時点で他の応募者から「雨宮さんがすごい」って話が挙がるくらい雨宮さんの応募作品は話題になっていたんです(笑)。樹林さんは「イラスト(1次審査)ではキャラクターを描ける力を見たい」と言っていたのですが、その観点でも雨宮さんの作品は絶賛されていましたね。

出典:『探偵と助手』(雨宮先生 ILLUST DAYS公式アカウント)
―2次審査ではネーム、3次審査では完成原稿の提出が求められましたが、難しかったですか?
雨宮:
難しかった、というよりは、原作付きでマンガを描く…という経験がなかったので、すごく新鮮でした。
白土:
ミステリー要素のある作品のご経験はあったんですか?
雨宮:
他誌連載の作品で「登場人物が亡くなるシーン」は描いたことがあったので、ミステリー要素の経験はあったと言えるかもしれません。その意味では、新鮮さも描きやすさも、両方感じていましたね(笑)。
―受賞されたとき、どんな気持ちでしたか?
雨宮:
落ちるとか受かるより、「受からないともう、四鬼くんと天草さんを今後描くことができない」というのがすごく嫌でした。審査期間、何ヵ月間も一緒にいたキャラでもあったので「もう会えないなんて耐えられない!」と思っていました。
白土:
そこまで思い入れを持っていただけたなんて、とてもありがたいお話です…!
雨宮:
実際に受賞のご連絡をいただいたときには、「よかったぁ」という気持ちと「コレは大変なことになったぞ」という気持ちになりました。嬉しい気持ちは一瞬で終わってしまって、すぐに不安になって改めて絵の勉強を始めました(笑)。
白土:
すごい(笑)、マンガ家の鑑ですね!
ネームをzoomでリアル修正!? 3人での打ち合わせ
―『ギフテッド』チームの3人は、連載に向けてどんなことをしていたんですか?
白土:
当時も今も、以下の流れで進行しています。
①樹林さんがシナリオを執筆
②雨宮さんがネームを作成
③zoomで3人揃って打ち合わせ
④雨宮さんがネームを修正し、清書
白土:
基本的に①の時点で既に完成度の高いシナリオではあるのですが、樹林さんから「ここは雨宮さんに考えてほしい」というコメントが添えられていることもあります。特にキャラクターづくりにおいては、樹林さんが雨宮さんに強い信頼を置かれているのを感じますね。
―zoomで3人揃って打ち合わせ! イマドキですね
白土:
そうですね。③では、zoomの画面にネームを映しながら、リアルタイムで赤字を入れていくような打ち合わせをしています。ただ、連載初期こそ打ち合わせでのネーム修正点もいくつか挙がっていたのですが、今では雨宮さんのネームの完成度が高すぎてほとんど雑談で終わってしまうこともあります(笑)。
雨宮:
樹林先生の説明がとってもわかりやすいんです! 良いところは褒めてくれつつ、「どこを残して、どこを直すか」をわかりやすく教えていただいています。折角の機会なので「全部自分のものにしてやろう」と思って取り組んでいたら、最近は「直しが少なくてつまらない」と言っていただけるようになりました(笑)。

樹林氏がリアルタイムで赤字を入れていく
―ネームでの修正点がほぼナシってすごいですね…打ち合わせを重ねていく上で、マンガの描き方も変わってきましたか?
雨宮:
変わったと思います。これまではネームと言うか、マンガが全然描けていなかったな、ということに気付くことができました。これまでは「原作を整理してページの中に収めていた」だけだったというか。3人での打ち合わせを通じて、マンガ家としてレベルアップしていることを感じられます。今は「マンガを描くということに片足突っ込んだな」という感覚です(笑)。
白土:
本当にものすごい速度で雨宮さんが進化されているので、樹林さんも連載を重ねるごとにどんどんモチベーションが高まっていらっしゃいますね。

アニメイトの担当者も絶賛! 1巻発売時の大キャンペーン
―連載が始まってから、どんな反響がありましたか?
白土:
なかよしの読者に対しては、実は不安な気持ちもありました。第1話から人が亡くなるシーンがあるようなハードな作品なので、どこまで受け入れてもらえるかな…と。
ただ、この心配は杞憂でした。連載が始まってからは、なかよし読者からも非常に多くの応援のメッセージをいただいております。ありがたい…!
雨宮:
なかよし本誌のページ下に、アンケートに答えてくれた小中学生女子の読者からのメッセージが載っているのはやっぱり嬉しくなりますね。私の周りの人からは「死体がキレイだけど上手だね」と言ってもらえたことがあります。ミステリーにおいて、人の生死は重要な情報。ショッキングなシーンもなかよし読者のみなさんにも読んでもらえるように描きたいと思っているので、すごく嬉しかったです。
白土:
雨宮さんはキャラクターの書き分けが非常に巧みなので、ショッキングでありつつもキレイな印象の絵を描いてくださるので「死体がキレイだけど上手」というのはとてもよくわかりますね。
そんな絵の魅力のおかげもあって、アニメイト池袋本店さんで、単行本1巻の発売にあわせて大規模なキャンペーンを実施してもらえたのもとても印象的でした!
―アニメイト池袋本店…! 店員さんたちも歴戦の猛者揃いですね。そんな場所での大規模キャンペーン、どうやって企画されたんですか?
白土:
実は私たちからの持ち込みではなくて、アニメイトの担当の方に1話の見本を送った時点で「大きくキャンペーンしたい!」と言ってくださったんです。1巻発売時には、池袋本店の1F〜2Fの階段と踊り場を大きく使って1話の複製原画をバーっと展示させていただきました。

階段の踊り場に『ギフテッド』の横断幕!

階段の途中に大量の複製原画!
白土:
このキャンペーンの効果もあって、なんと3日で200冊が完売!急いで追加分300冊を納品したのですが、それもすぐに完売してしまうほど盛況でした。だれよりもマンガに詳しいアニメイトの担当の方に「複製原画を大きく見せることでアニメイトのお客さんが興味を持ってくれる」と確信してもらえたのも、雨宮さんの美麗な絵あってこそですね…!

コミック売り場でも大きく取り上げていただいた
相互にインスピレーションを与え合う関係
―アニメイトの担当の方と樹林さんを魅了する雨宮さんの絵…。改めてそのすごさがわかるエピソードですね!
白土:
元々、樹林さんはオーディションを通じて「自分が作ったもの以上のものを返してくれる人を探している」と言っていました。それが、雨宮さんはドンピシャだった。担当編集という立場からみても、最高のマリアージュだと思っています。樹林さんも「雨宮さんが描いてくれたことで二人のキャラクターが固まってイメージが広がった」と言ってくれています。
雨宮:
『ギフテッド』においては、特にキャラクターづくりに関してかなり自由に、大きな裁量でやらせてもらっていると思います。同時に、原作があるからといって、キャラクターの研究を怠ったら描けなくなってしまうな…とも感じています。
原作付きだからといってラクだというワケではなく、思っていた以上に裁量も楽しみも大きい環境で取り組めています。「私が作画をする意味」を常に感じながら仕事ができるのはとてもありがたいです!
―これまでもキャラクターづくりの話が何度か挙がりましたが、雨宮さんがキャラクターを描く際のこだわりはどんなものでしょうか?
雨宮:
登場人物のバックボーン(背景)を想像して描くこと、でしょうか。主要な登場人物については樹林先生からの情報提供もありますが、それ以外のキャラクターについては完全に自分で背景を考えて描いています。キャラクターとしての深みを出したいですね。

右ページと左ページで大きく印象が異なり、性格やバックボーンが伺える登場シーンとなっている
白土:
樹林さんも、雨宮さんのネームを受けて「こいつ想像以上にいいキャラになったなぁ…」と感動するくらい、魅力的なキャラを描いてくださっていますね。
雨宮:
加えて、なかよし読者を想定しながら「嫌われそうなキャラ」「好かれそうなキャラ」を描くことも意識しています。
白土:
確かに…! こういった具合に主要キャラ以外にも彩りを加えてくださるので、それが樹林さんにとってもインスピレーションになっているんですね。私も勉強になりました(笑)。
―お話を伺っていると、3人がそれぞれ刺激を与え合い、高め合えるようなチームになっているように感じますね。
白土:
そこもお二人を「最高のマリアージュ」だと思えるポイントですね。樹林さんのシナリオも十分すぎるほど素敵なのですが、雨宮さんはネームでその魅力を倍増させてくれています。
シナリオで「このキャラかっこいいなー」と思っていたのが、ネームで「えっ!? こんなにかっこよくなるの!?」と驚かされるほどです。そんなふうに樹林さんと雨宮さんがハイレベルなラリーを重ねていく中で、チームとしても士気がどんどん高まっていくのを感じています。
「諦めていた夢に出会えた」オーディションだった
―最後に、なかよし についてどう思われているか聞いてもよいでしょうか?
雨宮:
子供のころ「なかよしっ子」だったので、憧れというか…昔読んでいた雑誌に自分が描いた作品が載っているのが素直に嬉しいです。これまでも自分の作品に対して「ジャンル的になかよしではないだろう」と思いながら描いてきたので、「諦めていた夢に出会えた」というのが一番大きい感情な気がします。
白土:
なんとステキで締めに相応しいお言葉…ありがとうございます(笑)。なかよし自体が「おもしろければなんでもOK!」な雑誌なので、これからもDAYS NEOを通じて、もっとたくさんのクリエイターさんと出会っていきたいと思っています!
なかよしの紹介

「なかよし」では、『どうせ、恋してしまうんだ。』・『新婚だけど片想い』などの恋愛漫画のほか、ミステリー漫画『ギフテッド』、中華ファンタジー『偽り姫の内緒ごと〜後宮で身代わりの妃を演じたら、皇帝と護衛に寵愛されました〜』、異種族恋愛もの『ヴァンパイア男子寮』など、幅広いジャンルの漫画が連載中です。
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