※この記事は、2022年8月3日に公開したものを再掲載しています。
マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から連載に繋がった作者と作品を紹介する「それはDAYS NEOから始まった」、第12回!
今回はイブニングで連載中 & 第①巻発売中、「缶詰をテーマにした連載漫画は史上初」と話題を集めている『羽衣先生は今日もカンヅメ』の華鳥ジローさんにインタビュー。
DAYS NEOを使おうとしたキッカケや担当編集の指名の決め手を赤裸々に語っていただくのはもちろん、「……先生、本当に缶詰はお好きなんですか?」という答えにくい質問にも、バッチリ回答していただきました。
作品紹介


『羽衣先生は今日もカンヅメ』 著:華鳥ジロー
漫画家を目指す大学生・稲葉(いなば)ニチローは、人気グルメ漫画家・羽衣青葉(はごろもあおば)の下でアシスタントとして働くことに。
勤務初日、意気込むニチローが職場で見たものは大量の缶詰…。
美人作家の正体は“缶詰偏愛”がすぎる年上お姉さんだった!!
新感覚カンヅメラブコメ開幕!

『羽衣先生は今日もカンヅメ』チームの紹介

2014年デビュー。兵庫県出身。
過去作に『卓越のサンシャイン』『無人島で××したらやばすぎた!』(GANMA!)。
最近感動した缶詰は竹中罐詰の『天の橋立シリーズ』。
公式Twitterはこちら!

入社15年目。週刊誌編集部出身。
担当作は「リエゾンーこどものこころ診療所ー」「GIANT KILLING」「社外取締役 島耕作」。
「圧倒的な熱量」がマッチングの決め手
―早速ですが…どうしてDAYS NEOを利用されたのでしょうか?
華鳥:
DAYS NEO自体は、サービスができた当初から気になっていました。「作家が編集者を選ぶ」という逆指名の仕組みがとても画期的でしたね。
普通の持ち込みって、どんな人が担当になってくれるかが運任せのところもあると思っていて。たまたまその時の担当者と合わなかっただけで、ずっと憧れていた雑誌を諦めなければならないかもしれない。そう考えると、作家にとっては厳しい側面もあるな、と。
DAYS NEOのオープン直後は他誌で連載中だったのですが、その連載も終わったのでステップアップの意味も込めてDAYS NEOに投稿しました。

―投稿作『カンヅメ作家と缶詰料理』は、担当希望が5件も寄せられる大盛況! その中から現在の担当編集者を選んだ決め手はなんだったんでしょうか?
華鳥:
5名もの編集者さんからの担当希望…今思い出してもありがたい限りです。その中からたのさんを指名したのは、「このテーマで連載したい」という熱量が文章から伝わってきたからです。
たの:
元々「缶詰」をテーマにした漫画をやりたいと思っていたところ、華鳥さんの作品を拝見して、「ココが勝負だ…!」と思ってメッセージを送ったのを覚えています(笑)。他誌でも既に活躍されている方でしたし、地力は十分だろうと。
華鳥:
自分自身、機械的に編集されるのがちょっと苦手なタイプなんです。これだけの熱量で「あなたの作品を連載させたい!」と言ってくれたことが嬉しかったですね。ただただ丁寧な文章というだけでなく、今後の具体的な見通しも記載してくれていたので、この人となら一緒にやっていけるだろうと思えました。
たの:
プロとして活動されていた方だったので、具体的な企画を提案できたほうが目に留めてもらえるかな、と思ってメッセージを考えました。既に他の編集者から熱いメッセージで4件も担当希望が出ていたので、負けないようにしなきゃ…と(笑)
実は、華鳥さんが例えばモーニングの新人賞に応募してくれていたとしたら、担当は僕以外の編集者になった可能性が高いです。持ち込みとか新人賞の担当決めは若手編集者へ経験を積ませることも多く、希望者が複数いたら僕が「担当したい!」って手を挙げても、担当させてもらえなかったんじゃないかなぁ…。
もしそうなっていたら僕から華鳥さんに個人的にオファーを出すこともできないし、DAYS NEOという場があったからこそ僕たちは出会えたんだと思っています。
華鳥:
やっぱりそうなんですね! 持ち込みに行くとほとんど若手の編集者さんが対応してくださるので、そういった傾向なのかな、とは思っていました。
たの:
特に持ち込みは基本的に新人編集者が電話を受けて対応しますからね…なかなか僕の出番はないんです(笑)
「編集❝部❞のつながりを活かしてイブニングでの連載へ
―マッチングといえば、モーニング編集部とマッチングされた後にイブニングで連載が始まっていますよね。これはどういうことなんですか?
たの:
実は、モーニング編集部とイブニング編集部は同じ部署なんです。外からだとちょっとわかりにくいと思うのですが、部署名も「モーニング・イブニング編集部」です。更に、この中でコミックDAYSの運営もやっているんですよ。
華鳥:
僕も、たのさんからお話を聞くまでは全く知りませんでした…
たの:
マッチングした当初は、『カンヅメ作家と缶詰料理』をベースにコミックDAYSでの連載を考えていたんです。実際にコミックDAYSの編集チーフにネームも見せて、GOサインをもらえていた。ただ、チーフが「紙の雑誌は目指さないの?」とアドバイスをくれて。華鳥さんに相談したら、「目指したいです!」と答えてくれたのがイブニングでの連載に至った経緯ですね。
―そんなに柔軟な連載先の選択肢があるなんて、お恥ずかしながら僕も知りませんでした(笑)
たの:
実際、こんなに編集部間の横のつながりが強いのは講談社内でもとても珍しいと思います!
華鳥:
モーニング編集部の方とマッチングしたのに、コミックDAYSとイブニングでの連載も提案してもらえるなんて思ってもみませんでした。当時の僕としてはただただありがたかったですし、なにより嬉しかったですね。
直近の連載がWebだったので、紙媒体への憧れもあったんです。隔週連載は作業スピードにも合っているし、愛読していたイブニングでの連載を申し出ました。
たの:
紙媒体だとどうしてもページ数の制限や掲載作のバランスがあるから、新連載を始めるのにはタイミングも重要になってくるんですよね。その点、コミックDAYSであればページ数の制限はないので、タイミングを選ばず連載開始できるというメリットもあります。
華鳥:
こちらとしては最速で連載を開始できる選択肢をいただけるのもめちゃくちゃありがたいです。生活がかかってますから(笑)
編集❝者❞のつながりを活かして連載用ネームをつくりあげた
―それでは『羽衣先生』の話を…。「缶詰」のネタは当初から決まっていたと思うのですが、DAYS NEO投稿作の『カンヅメ作家と缶詰料理』と連載中の『羽衣先生は今日もカンヅメ』とでは主人公と先生の関係性が少し変わっている気がします。
華鳥:
『カンヅメ作家と缶詰料理』自体が連載を見据えて描いた読み切りで、たのさんも「この作品で連載を目指そう!」と言ってくれていました。
その後、コミックDAYSの編集チーフに連載ネームを見てもらったときに「軽めのラブコメ要素もいれてみたら?」と提案をいただきまして。更にその後、イブニングの編集長から「もっとラブコメ色強め & セクシーに!」と重ねて提案をいただいて(笑)今の2人の関係性は、これらを反映した結果できたものです。
たの:
華鳥さんはこれまでラブコメって描いたことなかったんですよね?
華鳥:
そうなんです。読み切りとかで、日常モノの延長として描いたことがあったかな…? くらいの経験値でした。
―では、イブニングの連載用ネームを作るときは新しいことへのチャレンジだったんですね…!大変なこともたくさんあったんじゃないですか?
華鳥:
かなり密に打ち合わせを重ねましたね…ネームもかなり大きく変わりました。
実は、ネームをどうしようか考えている間、たのさんがモーニング・ツーのチーフや他編集部のラブコメが得意な編集者さんたちからのアドバイスを集めてきてくれたんです。具体的なアドバイスをたくさんもらえて、それがものすごく勉強になりました。ラブコメを読むこと自体は好きだったので、「よし! やってみるか!」と改めて心が決まった感じです。
たの:
編集者によって得意ジャンルは違いますからね。モーニング・イブニング編集部内だけでなく、社内には色んなジャンルに精通した編集者がいるので、そんな人たちにネームを読んでもらえて、意見をもらえるのは助かります。自分もこれまでラブコメ作品を担当した経験はなかったので、華鳥さんと一緒に勉強しながら進めてきました。
華鳥:
他の編集者さんからアドバイスをもらえる、というのは初めての経験でしたよ! たのさんのフットワークの軽さ、本当にありがたかったですね…。正直、「ここまでしてくれるんだ」と感動していました(笑)
新しい缶詰と出会うたびに驚きがあるんです
―「缶詰」をテーマとすることははじめから決められていたということですが、元々 缶詰はお好きだったんですか?
華鳥:
これはちょっと言いにくいのですが…ちゃんと調べてみるまでは「缶詰って本当に美味しいの?」って思ってました(笑)
なので、「缶詰ってそんなに美味しくないけど、手軽。じゃあ、その缶詰をいかに美味しく食べるのか?」という話を描きたいと思っていたんです。一般の認識としても、缶詰ってそんなに美味しいとは思われてないんじゃないかな…って。
ただ、調べていたら缶詰を好きな人がたくさんいることを知って、自分でも食べてみて、その面白さに気づいて。じゃあ「缶詰って美味しいよね! でも、料理したらもっと美味しいんだよ!」という方針に変えようと考えました。
元々詳しいわけではなかったので、今も絶賛勉強中です。毎回新しい缶詰を食べるたびに「こんな美味しいのか!」って驚かされてます。
―確かに、お店の缶詰コーナーとかみるとものすごくたくさんの種類が陳列されていますよね。年々増えているようにも感じます。
華鳥:
ものすごいバリエーションですよね! 色んな種類・コンセプトの商品が販売されていて、眺めているだけでも楽しいです。
…ちょっと大きな声では言いにくいのですが、いわゆる「高級缶詰」を取材費で食べさせてもらえるのもとてもありがたいですね。地方名産の缶詰も多くて、送料のことも考えると自費で購入し続けるのは厳しいので…(笑)。
―これまで調査を進めてこられた中で、一番好きな缶詰はなんですか?
華鳥:
第8話に登場した竹中罐詰株式会社さんの「天の橋立」シリーズです。美味しすぎて、人に配ってます。感謝の気持ちを伝えるのにぴったりなくらい美味しいんです。先日も、父の日に贈りました。「そのままでも、調理しても本当に美味しいから!」と。今回の連載のためにたくさんの缶詰を食べてきましたが、あの美味しさは本当に衝撃的でした…!
―「天の橋立」…聞いたことあります!
華鳥:
第8話では「天の橋立」シリーズのアレンジレシピも紹介しているので、ぜひ試してみてください!
―楽しみです! …そういえば、作中では缶詰のアレンジレシピがたくさん登場しますが元々料理はお好きだったんですか?
華鳥:
料理は好きでした。ただ、家族ができてからは人のためにつくるようになって…ほぼ毎日つくっているので、今はもう20分以内にできる料理ばかりになっています(笑)

人参と「茶わんむし」と「ツナ」と「みそマヨほたて」…!?
マッチング後、4ヶ月で連載決定、1年で単行本発売!
―今日は様々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
たの:
実は今日(2022年6月16日)、華鳥さんと僕がマッチングしてちょうど1年なんです。
華鳥:
えっ! そんなに経ちましたか!? …そうか、そう考えるとマッチング後、4ヶ月くらいで連載が決まって、今はもう①巻の単行本作業も終了して…。この1年、めちゃめちゃ早かったです。
たの:
この記事が出る頃には①巻も発売されていると思いますが、これからもたくさん缶詰のこだわりを届けていきましょう! 引き続きよろしくお願いします〜!

お忙しいところご対応いただき、ありがとうございました!