ゲームラボと創る #01「率直に言い合える関係」 生高橋さん×フィリップさん インタビュー

ゲームラボと創る #01「率直に言い合える関係」 生高橋さん×フィリップさん インタビュー

講談社ゲームラボと作品を作っている作者(=ラボメンバー)を紹介する「ゲームラボと創る」。第一回は2026年2月にラボメンバーとなった生高橋さんとフィリップさんにインタビュー。

新作の内容はまだ明かすことはできませんが、二人のルーツや制作スタイル、ゲームラボとの出会いについて話を聞きました。

生高橋
専門学校卒業後、独立して個人開発を中心に活動。
代表作に『ElecHead』『Öoo』。言語に頼らないノンバーバルなゲームデザインが特徴。
フィリップ
専門学校卒業後、株式会社タムソフト入社。
プランナーとして勤務ののち独立。本作が独立後初の作品となる

ゲーム制作の原点『Downwell』と『The Last of us』

――本格的にゲーム制作を始めたのはいつ頃からですか。

生高橋:
2015〜2016年頃、ゲーム系の専門学校に入ってからですね。それまでも『リトルビッグプラネット』のように、ゲームの中でゲームを作って遊べる作品は好きだったんですが、自分で一本の作品を完成させた経験はありませんでした。専門学校に入って初めて、「ゲームを作る」ということをちゃんと学び始めた感じです。

――ゲーム業界を目指そうと思った理由は何だったのでしょうか。

生高橋:
人生の中で仕事をしている時間ってすごく長いじゃないですか。だったら、自分が好きなことを仕事にした方が幸せなんじゃないか、と単純に思ったんです。ゲームは子どもの頃からずっと飽きずに遊んでいましたし、自分にとって一番自然に向き合えるものでもありました。

――これまでに『ElecHead』『Öoo』とパズルアクションを手掛けてきましたが、そのきっかけを教えてください。

生高橋:
専門学校の課題ですね。当時、日本ゲーム大賞に学生部門というのがあって、上位作品はほぼパズルアクションでした。なので、学校から「パズルアクションをつくりなさい!」って(笑)。参考作品をいろいろ探す過程で、同級生だったフィリップがSteamの存在を教えてくれて。そこから『Braid』『FEZ』『VVVVVV』といったパズルアクションに出会いました。

――いちばん影響を受けた作品はなんですか?

『Downwell』です。色数の少ないドット絵で、ボタン数も少なくて、一見とてもシンプルなのに、遊んでみると驚くほど深い。「こんな少ない要素だけで、ここまで豊かな体験が作れるんだ」と感動しました。しかもそれをたった一人で作ってる。自分も個人クリエイターになれるかもしれないと思いました。作り方の面でも影響を受けてます。「良いアイディアは複数の問題を一気に解決するもの」みたいな宮本茂さんの言葉がありますよね、それを(『Downwell』作者の)もっぴんさんが話してるの聞いてすごく腑に落ちて。今の僕自身も開発の際に一番大切にしています。

――フィリップさんはもともと映像分野を志していたそうですね。

フィリップ:
そうですね。幼少期から映画や映像作品を作りたいと思っていました。でも、その考えが大きく変わったのが、『The Last of Us』でした。映画みたいだけど、自分がその世界の中に入り込める。その感覚にすごく惹かれて「ゲームを作る側に回りたい」と思うようになりました。

――今でも「映画的なゲーム」を目指しているのでしょうか。

フィリップ:
少し変わりました。今は、ゲームだからこそ成立する体験に、映像表現をどう重ねられるかを考えています。ゲームだからできることをもっと突き詰めたいんです。

――最初に遊んだゲームは覚えていますか。

フィリップ:
ゲームボーイの『ポケットモンスター』か、メガドライブの『ソニック』のどちらかですね。子どもの頃、ドイツに住んでいた時期があって、叔父が日本からゲーム機を送ってくれたんです。ゲームボーイアドバンスやニンテンドーDSでもよく遊んでいました。ゲームはずっと身近な存在でした。

「遠慮しないでいい関係」タッグを組んだ理由

――新作は、どのような経緯で二人で制作することになったのでしょうか。

生高橋:
僕らは専門学校時代の同級生で、卒業後もときどき遊んでいました。で、最初に企画を相談した相手が、フィリップでした。この企画の素案を考えていく中で、今までより世界観や演出を強化する必要もあると考えました。でも、自分はどちらかというと、ゲームデザインや遊びの部分に集中したいタイプなんです。一方で、フィリップは映画や小説にも造詣が深く、世界観を考えるのが好きだった。

――ちょうどほしいスキルを持っているのがフィリップさんだったと。

生高橋:
ただ、得意分野が違うこと以上に、ちゃんと意見を言ってくれる相手だったことが大きいです。仲が良いから遠慮するんじゃなくて、「そこは違うと思う」と言ってくれる。そういう相手と作品を作ることで、自分も成長できると思いました。

――フィリップさんは、最初に企画を聞いたときどう感じましたか。

フィリップ:
プロトタイプすらなくて、本当に完成するかも分からない状態でしたが率直に「これは挑戦する価値がある」と感じました。

――そのために会社も退職されたそうですね。

フィリップ:
はい! それなりに悩みましたが「今やらなかったら後悔するかもしれない。」そんな気持ちの方が強かったですね。

――退職のことを聞いたときどう思いましたか。

生高橋:
ドン引きしました(爆笑)。
この企画を心の底から面白いと思ってくれている証拠だから嬉しさも少しはありましたけどね。

――現在の役割分担を教えてください。

生高橋:
大きく分けると、ゲームデザイン、プログラム、レベルデザインは自分が担当しています。

フィリップ:
僕は演出とデザイン全般です。作業はそれぞれ一人でやることも多いですが、分業って感じはあまりしないです。

生高橋:
毎日のように相談しています。

――意見がぶつかることもありますか。

生高橋:
めちゃあります(笑)。でも、それがいいんですよ。むしろ自分とは違う視点を持っているからこそ、一緒にやっている意味があります。「その発想はなかった」ということも多いですし。

フィリップ:
遠慮しない関係だからこそ、本音で話せます。逆に、お互い気を遣いすぎていたら、ここまでは来られなかった気がします。お互いが納得できるまで議論する。それが今の制作スタイルです。

――フィリップさんは、これまでゲーム会社で働いていたんですよね。

フィリップ:
卒業後にタムソフトへ入社して、オリジナルから版権モノまで幅広いジャンルの開発に携わってきました。プランナーとして参加しましたが、いろいろな仕事を経験させてもらって、今の作品づくりにも活きている部分はたくさんあります。

「売るのも難しいし、売れるかも本当にわからないけどいいですか?」ゲームラボとの出会い

――生高橋さんは基本的にセルフパブリッシングしてきた方だと思いますが、今回はどうしてゲームラボと作ることを選んだのでしょうか?

生高橋:
僕たちの企画はかなりチャレンジングなので、正直不安はゼロではない。だから、信頼できるパートナーがほしかったんです。
でも、パブリッシャーと組むことはプレッシャーにも繋がる。なかなか悩ましいところだったんですが、講談社は最初から楽しそうに僕たちの話を聞いてくれて、驚きました。

――どういう形でゲームラボと繋がったのでしょうか?
担当編集:
私が1年半くらい前の「東京ゲームダンジョン」で『Öoo』を展示してる生高橋さんにお声がけしました。「次回作を一緒にやりませんか?」って。

――どんな印象でした?
生高橋:
最初「構想はあるけど、売るのも難しいし、売れるかも本当にわからないけどいいですか?」って伝えました。そしたらむしろ興味を抱かれました。その後何度かお会いして具体的な企画の話をしたり、ゲームラボのことを聞かせてもらったりしました。『Öoo』のリリースがひと段落したあと、まずは選考会議に向けて打ち合わせをスタートしました。

――最終的にゲームラボに企画を出す決め手はなんだったんでしょうか?
どんなにチャレンジングといえども、プレイヤーがお金を払う以上は作品として成立させることが前提です。でも、そのうえで「まだ前例がないから難しい」と判断されるのではなく、「まず挑戦してみよう」と受け止めてもらえたことが大きかったですね。今回の企画は、決して分かりやすく説明できる作品ではありません。だからこそ、企画の面白さを信じてもらえたことは、自分にとってすごく心強かったです。結果として、今も自分の作りたいものを無理に変えることなく、制作に集中できています。

フィリップ:
僕も近い印象です。会社で版権モノを作っていた頃は、「この条件を満たさなければいけない」という考え方に触れることも多くありました。もちろん、それは商業作品として必要なことですし、自分にとっても大切な経験でした。今は新しい遊びや表現をどう形にするか、という議論により多くの時間を使えています。担当編集という一歩引いた視点を持つ人がいることの安心感もありますね。

――ゲームラボには、一つの作品に一人の担当編集が伴走する体制があります。この点についてはいかがですか。

生高橋:
自分は学生時代から、作品を見てもらう先生や担当のような存在がいたので、それほど違和感はありませんでした。やっぱり一人の担当と継続して話せることはやりやすいですね。作品の積み重ねやコンセプトを理解してくれているので、相談もしやすいです。

フィリップ:
僕はかなり新鮮でした。会社では、企画、シナリオ、グラフィックなど、領域が明確に分かれていることも多かったので。一人の担当編集と長く作品について話し続けられるのは、ゲームラボならではの面白い仕組みだと思いました。

「『まだ世の中にない』と思える企画を」応募を考えているクリエイターへ

――ゲームラボは担当編集が「選考会議」に企画を提出してそれを通過することで正式に支援がスタートします。それに向けて企画書を作るとき、意識していたことはありますか。

生高橋:
僕たちの場合は文章で全部説明しようとは思っていませんでした。それよりも、「どういう体験なのか」が伝わることを大切にしていました。動画でもいいし、デモでもいい。実際に触ってもらえれば伝わる企画なら、それを見せる方が早いと思っていました。今回の作品も、言葉だけでは伝えきれない部分が多かったので、体験を見せることを意識しました。

担当編集:
私は選考会議に出すまでに何度もお二人と話していたので面白さは確信していました。それをどうやって、まずは選考会議に出席する部員たちに伝えるか。その観点でフィードバックをしました。

フィリップ:
企画書の書式が自由だし、採算計画とかも求められないのはゲーム会社にいた自分にとっては新鮮でした。

――最後に、これからゲームラボへ応募しようと思っているクリエイターへメッセージをお願いします。

生高橋:
せっかく応募するなら、「まだ世の中にない」と思える企画を持ってきてほしいですね。データがあるから安心、という企画ではなくて、「これは見たことがない」と思えるもの。ゲームラボはそういう挑戦をちゃんと見てくれる場所だと思います。

フィリップ:
僕は「妥協しないこと」が一番大事だと思っています。インディだからこそ、本当に面白いと思えるものを目指してほしい。ただ、その一方で、ゲームはプレイヤーに届ける商品でもあります。自分たちが本当に作りたいものは何か、それをどうプレイヤーに届けるべきか。その両方を考え抜くことが、良い企画に繋がると思っています。

おわりに

ゲームデザインから作品を組み立てる生高橋さん。映像からゲームという表現へたどり着いたフィリップさん。
歩んできた道は異なりますが、それゆえにお互いにない視点を持ち寄り、率直に意見を交わしながら作品を磨き続けています。
インタビューの中で何度もあがったのは「率直に言い合える関係」という言葉でした。作品をもっと面白くしたいという思いを共有しているからこそ、遠慮なく意見を交わせる。
その二人が「挑戦的」というのはいったいどんなゲームになるのでしょうか。

続報をお楽しみに。