それはDAYS NEOから始まった #34 『ダンジョンの測量士~地図で無双するダンジョン攻略~』うらたにみずき先生×担当編集者インタビュー
マッチング型マンガ投稿サイト「DAYS NEO」から連載に繋がった作者と作品を紹介する「それはDAYS NEOから始まった」、第34回!
今回は2023年12月に週刊少年マガジン編集部 橋本(以下、橋本)とマッチングし、2026年6月9日(火)より「別冊少年マガジン」にて連載を開始、2026年10月8日(木)に単行本 第1巻が発売となる『ダンジョンの測量士~地図で無双するダンジョン攻略~(以下、ダンジョンの測量士)』の原作担当・うらたにみずきさん(以下、うらたに)にインタビュー。
青年誌で連載経験のあったうらたにさんと、少年誌編集者の橋本さん。DAYS NEOでの思いがけない出会いから、約1年にわたる試行錯誤を経て生まれた『ダンジョンの測量士』。「この地図って誰が描いてるんだろう?」という子どもの頃のゲームへの疑問が、二人の手でどのように連載作品へと育っていったのか。たっぷりお話を伺いました!

ダンジョン攻略に必要不可欠な「ダンジョンマップ」。この地図は一体誰が描いたのだろうか――。落ちこぼれのEランク勇者・ダリアは、未だ地図のない高難度ダンジョンの攻略を目指すが、独り彷徨ってしまう。そんな危険なモンスターが巣食うダンジョンに、倒れ込む一人の男。ただの二日酔いだったと話すこの中年男の正体は、人類で唯一魔王に迫った、伝説の勇者・グラハムだった。そして彼の手元には一枚の紙とペンがあって……?

2023年12月 DAYS NEOに『オオカミのカフェ』を投稿。
2026年6月9日 「別冊少年マガジン」にて『ダンジョンの測量士~地図で無双するダンジョン攻略~』(原作担当)の連載を開始。

週刊少年マガジン編集部所属。
現在の担当作は『灰仭巫覡』『ダンジョンの測量士』『FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST』『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』。
2023年12月 DAYS NEOにてうらたにみずきさんとマッチング。
本インタビューは作品のネタバレを多く含みます。
ぜひ『ダンジョンの測量士~地図で無双するダンジョン攻略~』を読了後にお読みください!
就職活動のつもりでDAYS NEOを使っていた
―DAYS NEOに投稿したきっかけを教えてください。
うらたに:
当時は他社の青年誌で担当がついていて、そこでの連載を目指していたんですが、どうにもうまくいかず企画が行き詰まっていました。このままやっていてもあんまり先が見えないかもなっていう時期に、「(マンガの)就職活動」をしたいなって思ったのがきっかけです。
―DAYS NEOのことはどうやって知ったんですか?
うらたに:
結構前に、講談社の編集者がSNSでDAYS NEOについて投稿しているのを見かけて、「あ、こういうサイトあるんだ」って知りました。そのときは連載中だったので、使いはしなかったですけど。普通の読者はともかく、やっぱりマンガを描いている人たちの間ではDAYS NEOは知られている印象ですね。
一つの作品をいろんな編集者に見てもらえること、お気に入り数や編集者からのメッセージとかリアクションが可視化されているのがよかった。新人賞とかだと編集部内の選考だから、自分がどう見られているのか、詳しくはわからなかったりするので、そこが見えるようになっているのはいいなって思いました。
―従来の編集部内で担当が割り振られる方式から、作家さんがご自身で編集を選ぶことができる形にしたいというのがDAYS NEOのコンセプトの一つなので、ご活用いただけてよかったです。橋本さんがうらたにさんに担当希望メッセージを送った理由を教えてください。
橋本:
すごくコマ割りが読みやすくて、4Pの短いページ数の中でしっかりギャップを入れているのも、マンガが上手だなと思いました。ちょっと淡い恋愛感情の出発点みたいなお話なんですけど、作品内で使っている言葉がストレートでみずみずしくて…なんか少年誌っぽいぞ!と。少年マンガを描くのに向いている方だと思って、担当希望を出しましたね。
うらたにさんに聞いてみたかったのが、以前講談社で描かれていたときは青年誌でしたよね。結果として僕とマッチングしたので「別冊少年マガジン」で描いてくださってますけど、DAYS NEO利用時に「少年誌」というジャンルは意識してましたか?
うらたに:
「週刊少年マガジン」とか、少年誌に持ち込みをするみたいな具体的な意識はなかったですね。ただ、ジャンルにはそこまでこだわりはなかったというか、編集者がどういう風にみてくれるのか、そっちが大事でした。たまたま反応してくれたのが少年誌の編集者だったってのは、めっちゃ良かったなと思います。
橋本:
なるほど。じゃあDAYS NEOじゃなかったら、やっぱり僕ら二人は出会っていなかったかもしれないですね。
―うらたにさんのDAYS NEO投稿作『オオカミのカフェ』は、電車で見かけた女性に恋をした男子高校生が、カフェで彼女と再会する物語でしたね。
うらたに:
『オオカミのカフェ』はDAYS NEOに投稿する目的で作った作品です。これまでの連載ではネーム担当だったんですが、作画なりなんなりを評価してもらえてもいいかなと思って。一応完成原稿まで描きました。
4Pとか短いのは今まで描いたことなかったんですけど、当時の僕はまず短い作品で編集者のリアクションを見たかったので。何がどの編集者に刺さるか分からないから、今の状態で描いたものをそのまま見てもらおうと思いましたね。
―過去に描いたマンガではなく、DAYS NEOに投稿するための作品だったんですね。作品づくりでは、どんなことを意識されましたか?
うらたに:
短い作品なら、最初と最後で変化があって、ちゃんと出来事が進んでいると実感してもらえる作品がいいなと。当時SNSで、たまたまウルフカットの女の人の画像が流れてきたんですよ。「こういうキャラいいじゃん」って思って、そのままマンガにできないかな、という感じでした。そしたら橋本さんからの担当希望メッセージで「この女の人がいいですね」って褒めてもらえたんです。
橋本:
キャラとして素敵だなと思って、そのままストレートな感想を言葉にした記憶がありますね。

序盤と終盤でウルフカットの女性のギャップが印象に残る。
―橋本さんの率直な担当希望メッセージを読んで、どんな印象を持ちましたか?
うらたに:
自分としてもキャラの良さが一番に伝わればいい作品だったから、「そこを言ってくれた!」みたいな、すごくスムーズに届いた印象がまず自分の中にありました。
「こう読んで欲しい」という描き手側の意図を、受け取り手が「こう読みました」ってちゃんと合致してくれた感じがあって。だから編集者として会話ができるだろう、という実感がありました。
—それは担当希望を受け取る側として、かなり嬉しいですよね。ちなみに、橋本さん以外の編集者からも担当希望は届いていたんですか?
うらたに:
投稿してわりとすぐに橋本さんから担当希望を貰ったんですが、そのままマッチングの承諾をしたので、他の編集者さんからは担当希望を受けていません。DAYS NEOの使い方としては、一旦キープしてある程度の期間は他の人のメッセージも待つ…みたいなのもあったとは思うんですよね。でも、橋本さんからのメッセージを見た時点で僕は「これ以上求めることはないな」と思ってしまって。
橋本:
マッチングまでかなり早かったですよね。
うらたに:
早かった記憶があります。作品を投稿して、橋本さんからメッセージをもらって、担当希望を承諾するまでが本当に一瞬で。もともと就職活動のつもりで使っていたこともあって、橋本さんとマッチングできた時点で目的を達成してしまったんですよね。そこで僕のDAYS NEO利用もあっさり終了したので、当時のことはわりと漠然としか覚えてないです(笑)。
—すごい(笑)。ビビッとくる編集者と出会えたら、そこで終了!というのもステキなマッチングのしかたですね。
うらたに:
そのまま連載したい企画があるとか、ある程度の大作を投稿する場合は、もっといろんな編集者の意見を聞きたい、という使い方もあると思うんです。でも僕の場合は、合う編集者と出会うための就職活動という感覚だったので、橋本さんと出会えた時点でもう十分でした。
青年誌作家が少年誌で連載を目指すまで
―かなりスピーディーなマッチングでしたが、実際にお話ししてみていかがでしたか?
橋本:
最初は電話でお話ししました。
うらたにさんはこれまでもネーム原作などで連載経験があったんですけど、DAYS NEOでは別のペンネームを使って投稿されていたんです。なので、最初に電話した時にそのことをうらたにさんから聞いて、「実は連載経験のある方なんだ」と知りました。
「あ、そうなんだ。じゃあ次までに過去作を読んでおきます」と、その時は一旦自己紹介だけして。次の打ち合わせでは、うらたにさんの過去作品を読んだうえで「じゃあマガジンではどんな連載をやろうか」って話題に移りました。
—DAYS NEOには「デビュー済み」のタグを表示できる機能もありますが、うらたにさんはあえて連載経験を出さず、別のペンネームで投稿されていたんですね。それはなぜだったんですか?
うらたに:
投稿した作品だけを読んで、編集者が何を思うかが知りたかったんです。「連載経験者なら手間がかからなそうだから、なんとなく声を掛けました」みたいなのは欲してなくて、純粋な作品への反応だけが欲しかった。とりあえず一旦まっさらな状態で読んでもらいたかったんですよね。
橋本:
そうだったんですね。最初の電話のあとに、うらたにさんの過去作も読んでみたんですけど、すごく面白くて! 「声をかけてよかった!」と思いました(笑)。
もちろん、最初は4Pの投稿作が好きで担当希望を出したんですけど、過去作を読んで「こんなに面白いマンガを描かれている方だったんだ」と、より一層うらたにさんのことを知れた感じでしたね。
—そこから連載を目指していったんですね。
橋本:
そうですね。当時はちょうど、連載決定の仕組みが編集長の一任から、編集部全体で話し合う連載会議へと移行している時期だったんです。連載が決まるまでのプロセスや、編集部がどういう作品を求めているかって、雑誌や編集部、その時の編集長によってもかなり違うので、まずは「今のマガジンではこうやって連載を目指していきます」というところから説明した記憶があります。
うらたに:
僕はそれまで編集部を転々とした経験もあまりなかったので、単純に「マガジンってこうなってるんだ!」と知るのが面白かったですね。編集部としてどういう作品を求めているのかとか、連載までどういうふうに進んでいくのかとか、そういう話を聞くのも新鮮でした。
―うらたにさんがデビューした青年誌と、週刊少年マガジン編集部では、作品づくりの感覚もかなり違ったんじゃないかと思います。そのあたりはいかがでしたか?
うらたに:
正直、最初は少年誌の描き方にどう合わせるかで悩みました。自分がそのまま描くと、「現実だったらこんなにうまくいかないよな」と考えて、どうしても展開にブレーキをかけてしまうんです。
でも少年誌では、そういう現実的な感覚よりも、「ここまでやったら面白い!」という勢いや気持ちよさを優先していいんだなと、だんだん分かってきて。「そこまでやっていいんだ。むしろ、そこまでやるんだ」という感覚を掴んでいったことが、青年誌で描いていた時との大きな違いでしたね。
橋本:
うらたにさんって、瞬発芸の作家さんというより、理屈でネームを描く作家さんなんですよ。それは過去作を読んでも分かっていて。
最初に何案か持ってきてもらった時、「ドーピングをする野球選手のマンガ」と「ダンジョンの地図を描く人のマンガ」みたいな案があったんです。どっちもうらたにさんなら理屈っぽく描けると思ったんですけど、ドーピングをする野球選手はちょっと大人だなと思って、「これはマガジンじゃないかも」と話した記憶があります。
うらたに:
そうでしたね。
橋本:
一方でダンジョンの地図を描く人って、なんかロマンがあるし、入り口は少年誌っぽいネタだなと思いました。うらたにさんが理屈で描けば、「天才が地図描いたぜ! チートだぜ!」みたいな話ではなくて、ちゃんと地に足のついたマンガになりそうだと思った。だから、うらたにさんの長所は、マガジンでもそのまま活かされてると思ってます。
―なるほど。少年誌に合わせてうらたにさんの持ち味を変えるというより、もともと持っていた「理屈で描ける」部分を活かしながら、少年誌らしい表現を掴んでいったんですね。
うらたに:
橋本さんとの打ち合わせで、『ハチワンダイバー』の話をしたのがすごく印象に残っていて。4Pくらい連続で見開きを使っているシーンがあるって教えてもらったんですよね。「これくらいやっていいんだよ」みたいな。それがすごく自分の中で腑に落ちた記憶があります。
理屈的なところはともかく、「僕のマンガはここにあるんだ」「目立つんだ!」みたいな、まっすぐズドンとくる表現の強さがあって。この表現の仕方は青年誌・少年誌に関係なく通用する技術だなと思って、当時すごく自分の中でしっくりきましたね。
橋本:
僕としては、たぶん無邪気に「もっと欲しい、もっと欲しい」ってリクエストしてただけだったのかもしれません(笑)。
うらたに:
でもそれで「何やってもいいんだ」って思えたんです。真面目に考えることだけが正義なんじゃなくて、どんな形でも目立つ。作品として強くならなきゃいけないんだ、という感覚はそこで生まれましたね。
―今のお話を聞いて気になったのですが、橋本さん自身の思う「少年誌」ってどんなものですか?
橋本:
僕はやっぱり、子どもが熱狂できる作品を担当したいなと思ってます。今は少年誌と青年誌を明確な定義で区分けすること自体、どんどんなくなっていると思うんですけど、これは編集部の意向というより僕個人の感覚として。
ちゃんと子どもが熱狂できるもの。中学生の自分が読んだ時に「これは面白い」って言える作品を担当したい、推したいなというのは思って働いてます。
子どもの頃の疑問から生まれた『ダンジョンの測量士』
―『ダンジョンの測量士』について聞かせてください。最初にうらたにさんがいくつか企画を出した時点で、「ダンジョンの地図を描く人」という案はあったんですね。どうしてこのテーマを思いついたんでしょうか?
うらたに:
最初にこの企画を考えたのはマンガの専門学校時代です。プロットや企画を何個かつくるみたいな授業課題があって、その中の一個でした。その後は自分が青年誌でデビューしたので、「これ面白いと思ってるけど、描くことはないだろうな」と隅に置いてたアイデアでしたね。
―かなり昔からあったアイデアだったんですね。うらたにさんのこれまでの現代軸な作品からすると、異世界ファンタジーというジャンルは個人的に少し意外にも感じたのですが、そのあたりはいかがでしたか?
うらたに:
子どもの頃にゲームを遊んでいて「この地図って誰が描いてるんだろう」って漠然と不思議がっていたのが、そもそものきっかけです。少年誌を狙って考えたアイデアではなかったんですけど、子どもの頃の自分が疑問に思っていたということは、子どもにも伝わる題材ではあるんだろうなとは思います。ずっと自分の中にあった「こういうの描いてみたいな」という案を、とりあえず一回出してみました。
現代軸とか異世界とかも、そこまでこだわりはなくて。僕は漠然と面白いマンガを描きたいと思っているだけなんです。ただ今となっては、異世界だからこそ「あれもできる」「これもできる」というのが楽しいですね。現実の世界を舞台にしていたらできないこともたくさんあるので、その自由度は最近すごく感じています。
橋本:
僕は異世界モノが出てきたこと自体は、全然驚かなかったですね。うらたにさんのネームの描き方を見ていて、この題材は合うだろうなと思っていました。測量士って、いわゆる異世界ファンタジーの中では地味な切り口じゃないですか。でも、うらたにさんが理屈を積み上げて描くことで、ちゃんと地に足のついた作品になりそうだなという感覚があったんです。
―ある種、“子どもの頃に抱いた疑問”を大人になった今、本気で考えている作品なんですね。
うらたに:
そうですね。子どもの頃の自分に、大人になった自分が「実はこうだったんだよ」って、嘘でも教えてあげてるような感覚はあります。
橋本:
打ち合わせでも、そういう話をよくしますよね。「この地図、どうやって納品してるんだろう?」とか(笑)。
うらたに:
ゲームだったら特に語らなくても成立するところまで、「もし本当にこの世界に人が住んでいるとしたら、どうなってるんだろう?」って考えるんです。そういうところは、なんとなく嘘で流さずにちゃんと考えていこう、という話は二人でよくしていますね。
―ゲームでは当たり前に存在しているものを、現実的に考えていくんですね。お二人ともゲームはかなりされるんですか?
うらたに:
僕は子どもの頃から『ゼルダの伝説』をかなりやっていて、このマンガのアイデアも基本的にはそこからなんです。一方で橋本さんは『ドラゴンクエスト』を通ってるんですよね。
僕一人だと「ゼルダではこれは当たり前だから」と思ってしまうところに、橋本さんからドラクエやほかのゲームの話を貰って、「そういう考え方もあるんだ」ってなる。お互いのゲーム体験を持ち寄りながら世界を考えていくのは、楽しいですね。
橋本:
打ち合わせでもゲームの話はかなり飛び交いますね。
物語を進めるうえで「こういう時、この世界だったら何が自然なんだろう?」みたいなことを二人で考えることも多いです。ドラクエでもゼルダでも、地図は当たり前のように出てくるけど、「これを誰が作ったのか」までは語られないですからね。
―連載が決まるまでは、どういう流れだったんですか?
橋本:
最初は異世界作品との類似性もあるなと思って、マガポケで連載したいと思っていました。当時のマガポケはチーフ陣が連載を決めるシステムだったので、うらたにさんにネームを描いてもらった段階で、マガポケのチーフとうちの編集長に読んでもらったんですけど、ダメだったんですよね。
そこからキャラクターを変えたり、途中で取材を挟んだり…そうしている間にマガポケがネーム会議制になって、全部員が評価をつけながら連載決定をする仕組みになったので、修正版のネームを出したんです。それもギリギリ落ちちゃったんですよ。
―ギリギリ……!それは悔しいですよね。
橋本:
ただ全員の評価を見ると、「別冊少年マガジン」のチーフとサブチーフの評価が高かったんです。
だったらマガポケで何往復もするより、「“別冊少年マガジン”でどうですか」とチーフに相談したら、ポジティブに考えてくれて。「別冊少年マガジン」での連載を目指すことになりました。チーフのリクエストを受けてうらたにさんに修正してもらって、今の形に至ります。
「本当の測量ってどんなものなんだろう?」って取材をしたり、連載までは1年くらいかかりました。
―実際の“測量”について取材もされたんですね。どういった取材先がありましたか?
うらたに:
測量士の資格を持たれている方がいる地図制作の会社と、ゲームのマップを作られている会社にお話を聞きに行きました。結局、このマンガはその合わせ技みたいな企画でもあるので。
今思い出したんですけど、地図の会社へ取材に行かせてもらった時、その会社が映画『大河への道』の仕事にも関わっていて。伊能忠敬がなぜ大河ドラマにならないのか、みたいな話を聞きました。端的に言うと「地味」ってことに尽きるんですよ(笑)。歩いてるだけだし、地図をつくるのは大変なんだけど、大変な割に見どころがないって言われがちで。
―確かに伊能忠敬ってすごく有名ですけど、逸話とか意外と知らないですよね。
うらたに:
そうなんですよ。ドラマとして成立させるのはめちゃくちゃ難しいと思うんですけど、その話を聞いた時に、「このマンガなら全部突破できるじゃん」って思ったんです。絶対地味にできないというか。ファンタジーなら、地図をつくること自体をいくらでも面白くできる。
―いい取材体験になったんですね。最初のネームから、今の『ダンジョンの測量士』はどのぐらい変わったんですか?
橋本:
測量士ってこと以外ほとんど変わりましたね。
うらたに:
確かに「ダンジョンの地図を描いている人」ということ以外は、最初のネームからしたらほぼ変わってます。前の形を修正している時間が長くて、キャラクターを丸ごと変えたりもしました。
「別冊少年マガジン」のチーフからフィードバックをもらって今の形が固まってからのほうが期間としては短いので、自分としては「まだ付き合いの短いキャラクターたちで連載決まった!」みたいな感じで焦りました。
橋本:
ちなみに主人公のキャラもかなり変化しています。
うらたに:
全然違いましたね。今は女性キャラが主人公だけど、もともとは主人公も男の子でした。でも構図としては似てるのかな。純粋に勇者を目指していたキャラクターが、「地図をつくる仕事があって、それを担う人がいるんだ」と知っていく。その流れは、最初から似ていたと思います。

伝説の勇者・グラハムに憧れる女性勇者のダリア。
―「地図を描いている人と出会って、一緒に何かをやっていく」という形は最初からあったんですね。
うらたに:
結局、地図を作ってる人を面白がる話ではあるので、その形はずっと残っていると思います。
橋本:
一年くらい企画をやり直していて、僕自身も考えが凝り固まってたんですけど、グラハムというキャラが生まれてからは一気に話が進みましたね。
―主人公・ダリアを導く伝説の勇者・グラハムは、読んでいてめちゃくちゃかっこいいキャラですよね。彼はどうやって生まれたんですか?
橋本:
「地図を描いてる人が面白い一話を、もう一回ちゃんと目指そう」みたいな話をうらたにさんとしたんですよ。その直後ぐらいに僕が海外出張に行かなきゃいけない時期があって。
移動中のタクシーに乗っていたら、うらたにさんからLINEで「このキャラどうすか」って、元勇者のおっさんが送られてきたんです。「これいいですね!」ってすぐ返信したのを覚えてます。あのタクシー移動は楽しかったですよ。「来た来た!」みたいな。
うらたに:
グラハムが生まれる前は、もっとストレートな勇者と、ストレートに勇者より上をいっている測量士のコンビみたいな作品でした。当初は、個人で地図を描いているというより、測量部隊というか…もっとリアルに考えていた企画だったんですよね。実際に地図が普及してるんだとしたら、国が部隊を作ってるんじゃないか、とか。連想ゲームというか、妄想でどんどん理屈を組んでいってたんです。
でもグラハムが誕生してから、理屈が一旦どうでもよくなって、「このキャラって何なんだろう?」と考えるほうにいって。そこからは早かったです。

初対面で主人公にゲロを吐く情けない男だが、その正体はなんと…⁉
―確かに今の『ダンジョンの測量士』を見ると、もう「このキャラしかありえない!」って感じがします。約1年間、企画を練っていく中でしんどかったことはありましたか?
うらたに:
しんどいという感覚は、あまりなかったですね。「もう少しここを直せば通るかもしれない」と修正を重ねているうちに、気づけば1年経っていた、という感じでした。
ただ、グラハムが生まれてからは一気に話が進んで。「今まであんなに時間がかかっていたのに、こんなに早くまとまるんだ」と驚きました。一つのキャラクターが企画の鍵になると、こんなにも物語が自然に動き出すんだなと。「キャラクターが勝手にマンガを作ってくれる」って、こういうことなのかと思いました。
―橋本さんはどうでしたか? 何回も「今回も連載通りませんでした」と伝える側も、なかなかしんどそうですが……。
橋本:
しんどいですよ(笑)。ストレートに一発で連載が決まったわけじゃなかったので、「またお直しです」って伝えるのはしんどかったです。絶対、修正するうらたにさんのほうがしんどいんですけど…。
ただうらたにさんって、「いや、それは…」みたいに否定から入らないんですよ。「そういうことなら、じゃあ直しますね」って感じで飲み込んでくれる方だったので、そこはすごく助かってました。
うらたに:
僕も逆の立場のほうがつらいかもしれないです。自分は、あんまり面白くないみたいな状態で載るほうが最悪だと思ってるから。人にあんまり面白くないと思われてるマンガを描くぐらいだったら、いつまでも直すほうがマシ、という感じがあります。
―めちゃくちゃかっこいいですね。連載を取ること自体がゴールじゃない、と。
うらたに:
新人だったら、もうちょっと違ったかもしれないですけどね。連載が目的になっちゃうと、やっぱりどうしても後が続かないというか。読んでもらって、面白いと思ってもらうところまでが僕らからしたら狙わないといけないところなので、そこを目指してやろうという気持ちがあります。
―最後に、『ダンジョンの測量士』の見どころを教えてください!
橋本:
グラハムにちょっとでも興味を持ってもらったら、信用して読んでほしいなと思います。その期待を裏切らないように、ずっとグラハムが楽しい、面白いキャラで、地図を描くマンガになってくると思うので、ぜひ読んでください!
うらたに:
ゲームをやっていて「この地図は誰が描いてるんだろう」と思っていた妄想を、どうにか真剣に考える形にしたマンガです。自分の中でも「そうだったんだ」って思いながら描いてるところがあって。それを楽しんでもらえたらいいなと思います!

グラハムの正体に気づくシーン。ギャップがかっこよすぎる‼
『ダンジョンの測量士~地図で無双するダンジョン攻略~』は、「別冊少年マガジン」で好評連載中&マガポケでも配信中 !
単行本 第1巻は2026年10月8日(木)より発売中!

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