講談社ゲームラボと作品を作っている作者(=ラボメンバー)を紹介する「ゲームラボと創る」。
第二回は、2025年6月にラボメンバーとして採択されて、今年『BUZZ or DIE』をリリース予定の凡さんにインタビュー。奥深い世界観とアクの強いキャラクターが魅力の短編ゲームを生み出してきた凡さんの、創作にまつわる考え方、そしてゲームラボとの作品づくりについて話を伺いました。

フリーゲーム制作者として2020年より活動。代表作に『十二股全部フる』『EgoMixer』など。
SFやミステリ、TRPGを好む。Steamでのリリースは今作が初。
ゲーム制作の原点 飽き性と「おさがりゲーム」
――本格的にゲームを遊び始めた頃の思い出を教えてください。
凡:
子供の頃からゲームはたくさん遊んでいたんですけど、すごく飽き症でした。いろんなゲームの序盤だけを遊んで、すぐにやめちゃって。今思うと贅沢な遊び方をずっとしていました。
――贅沢ですね(笑)。新しいゲームが次々と手に入る環境だったんですか?
凡:
4歳上の姉やその友達、親戚から、遊び終えたゲームが大量に「おさがり」落ちてくる環境だったんです。だから自分の好みとは関係なく、色々なゲームに触れられました。そこでたくさん遊んだ経験が、着想の幅に繋がっている気がします。
――そこから自分でゲームを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
凡:
ある正月、突然アイデアを思いついて、「ゲームって作ったことないけど、自分でもやれるんじゃないか?」って舐めてかかって作り始めたのが最初です(笑)。でも、最初の2年間は全然完成させられなくて、未完に終わってしまいました。それをすごく反省して、「次はちゃんと作ろう」と決意したんです。
――最初の作品のモチーフは?
凡:
初夢で見た「人外のキャラクターと子供のキャラクター」の夢がすごく気に入って。その年がちょうど蛇年だったので、「蛇の人外キャラ」を登場させる設定を思いつきました。もともと「一次創作のオタク」をやっていて、イラストを描いたり、音楽を作っては諦めるみたいな活動をずっとやっていたので、それらがすべて合わさった表現方法としてゲーム制作にたどり着いた感じですね。
――最初の創作活動はイラスト?
凡:
はい。中学生くらいです。きっかけはTRPGでした。当時、他人のすごく上手な絵を借りてTRPGを遊べるサイトがありました。でも、自分のプレイ技術はまだまだなのに、こんなに素晴らしい絵をタダで借りるのは申し訳なすぎる…と感じてしまって(笑)。その「申し訳なさ」の感情から、自分で立ち絵を描くようになりました。今でも「自分で作る方が気が楽」という精神で描いています。
「他人は自分のキャラに1ミリも興味がない」
――凡さんの過去作はフリーゲームでありながら非常に高い完成度と、キャッチーさがあります。制作の上で特に大切にしているスタンスはありますか?
凡:
一番の前提として、「大体の人間は他人のキャラクターに1ミリも興味がねえ」と思ってゲームを作っています。
――ものすごく冷徹というか、客観的なスタートラインですね。
凡:
だからこそ、ゲームの「掴み(導入)」を極限まで強くして、頑張ってキャラクターに興味を持ってもらえるように工夫しています。あとは、何周も周回しないとトゥルーエンドが見られないような、プレイヤーを疲れさせてしまう不親切な仕様は避けるようにしています。
――キャラクターにファンがついてるのは試行錯誤の賜物なんですね。凡さんの作るキャラクターは、内面やデザインだけでなく、名前なども一度聞いたら忘れられないインパクトがありますよね。
凡:
TRPG仲間であると同時に、創作の師匠みたいな人がいるんです。その人に昔ゲームを見せたとき、かっこいい名前をつけていたら「これだと覚えられないから、『逆転裁判』みたいに特徴的な名前にしろ」と言われて。そこから「佐木島」や「宇津」などの名前が生まれています。ゲーム作り全体について、「プレイヤーの貴重な時間をいただくのだから、コスパよくいこう」という強い意識があります。フリーゲームだったとしても、遊んでくれる相手は「お客さん」であり、最後まで見るかどうかはその人次第です。だから、自分の作品に時間を割いてくれることに対して、常にリスペクトと、「申し訳なさ」を抱えながら作っています。
「夏休みの宿題は1日目に泣きながら終わらせた」脅威の制作ペースの裏側
――凡さんはこれまでに未完も含めて8作品近く手掛けられていますが、制作ペースが早いですよね。フェローの頃から試行錯誤のスピードとクオリティには目を見張るものがありました。そのコツや心がけていることはありますか?
凡:
「微妙だったらやり直せばいいや」という気持ちで着手します。いったん6割から8割くらいのクオリティで一気に形にしてから、磨きをかけていきます。私の場合はそっちのほうが結果的に良いものになります。
――最初から完璧を目指さないのが完成への近道だと。
凡:
自分の性質なんだと思います。ある程度形になってないと不安になるというか…。小学校1年生のときに初めて夏休みの宿題が出たとき、最終日まで追い詰められるストレスに耐えかねて、1日目の夜に泣きながら全部終わらせたんです(笑)。
――1日目の夜に!? そんな小学生見たことない!
凡:
そうなんです。とにかく追い詰められるのが嫌で…極度の先延ばし嫌いなんだと思います(笑)。それが今でも、締め切りより遥かに早く提出物を上げる原動力になっています。あとは、外部的な締め切りに追われる環境を自分で作ることも有効ですね。クリエイター仲間と作業通話をして、「今日はここまで進めます」と宣言して自分を追い込んで制作していたこともありました。今は担当さんとの打ち合わせをペースメーカーにすることが多いです。
ゲーム会社内定辞退の果てにたどり着いたゲームラボ
――講談社ゲームラボに応募しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
凡:
ゲーム作りに没頭しすぎた結果、留年してしまい…しかも自分の好きなシリーズを開発しているゲーム会社から内定もいただいていたのに。翌年、もう一度その会社から内定をいただけたんですけど、またしても留年してしまい辞退しました(苦笑)。
――なんと! 2回も合格したのに…!
凡:
はい…(笑)。あと自分の性格的にオフィスに行くのは向いてない感じもしてました。でもゲームは作りたい、できたらゲーム作りで生きていきたい。そこで資金援助もあるゲームラボで頑張ってみようと腹を括りました。
――もうひとつの理由として「他者の視点」を求めていたそうですね。
凡:
そうですね。良し悪しの話ではないんですが、プライベートな関係だと、どうしても人間関係への気遣いがあって、作品に対して100%本音が言い合えない部分があります。そもそも趣味で作ってて、それを求めていない人だって当然います。だからこそ、編集さんのような、ビジネスパートナーとして、一歩離れたところから率直にフィードバックをくれる人を求めていました。
――実際にゲームラボ応募して、まずはフェローになったわけですが、最初の印象をいかがでしたか?
凡:
通常のパブリッシャーへの持ち込みは単発で終わることが多い印象があるのですが、ゲームラボは企画書に対して「これはどういうことですか?」とか「こういう方向性はどうですか?」とか、何度もラリーを重ねてくれました。客観的でありつつ、こちらのやりたいことを理解しようとしてくれる姿勢も、私には良かったです。個人開発でありながら、どこか会社に守られているような、不思議な安心感があります。それはラボメンバーになって本格的に開発が始まってからも同様です。
――安心感ですか。
凡:
すごくあります。もちろん良いものを作るというプレッシャーもありますが、「多少クセの強いものを作ってしまっても、裏でちゃんと編集さんがコントロールしてくれてるだろうな」と思ってます。それと、編集さんは変人に寛容なイメージがあるので…偏見ですが(笑)。打ち合わせでちょっとくらい変な言動しても受け入れてくれる安心感もあるんですよね。
選考会議では人に伝えることを意識した
――採択企画になった『BUZZ or DIE』ですが、どのような経緯で選考を通過しましたか?
凡:
『BUZZ or DIE』のプロト版で応募しました。コンセプトは一緒ですが、ゲーム仕様はかなり異なるものでした。ただ、技術面での懸念が結構あって一度ペンディングになり、就活もあったりしたので少しスローペースになりました。その間も別の企画を出すラリーなどもあったのですが、ひと段落したところで、もう一度『BUZZ or DIE』をブラッシュアップすることを決め、打ち合わせを重ねて採択に至りました。
――選考に向けてブラッシュアップする際に、特に意識したことはありますか?
凡:
自分が作って嬉しいものや、こだわりは自分の中である程度分かっているんです。でも、それが自分の中でどんなに良いと思っていても、相手に伝わらなければ意味がないと考えました。だから、自分の中の表現のこだわりを取捨選択したり、作り方を再検討したり、「人に伝える努力をする」ためにやれることをやってみようと。たとえば普段の自分なら絶対に作らないような、キャラクターの属性や設定を細かくまとめた資料を用意したり、企画に込めた想いを言語化したりするなど、自己開示することも実践しました。結果として、作品を客観視することができて、より良いゲームにブラッシュアップできたと思っています。やはり、こだわりを捨てることも、たまには大事ですね。
――これからゲームラボへ応募しようと思っているクリエイターへメッセージをお願いします。
凡:
ご存知のように個人でも発表できる時代です。ゲームラボに応募するということは「今までに届いていた人よりも、さらに広い範囲に自分の作品を届けたい」という思いがあるはずです。ゲームラボはその方向に向けて、全力で手伝ってくれる場所なので、怖がらずに「身を委ねてみる」というのも一つの手だと思います。
――なるほど。たしかに凡さんは初期から、ゲームラボと取り組むことの意義を意識していましたね。企画面ではどういう作品を期待しますか。
凡:
本作のようなテキスト中心のアドベンチャーは、『逆転裁判』シリーズ『ダンガンロンパ』シリーズといった偉大な先行作品の影響から、なかなか逃れられないと感じています。私も頑張るので、ぜひ新しいスタンダードになるような挑戦的な作品に取り組んでほしいです。そして、その仕組みを私がパクれるようにしていただけますと…楽しみにお待ちしております(笑)。
おわりに~『BUZZ or DIE』について~
――最後に、リリースを控えた『BUZZ or DIE』についてコメントをお願いします。
凡:
過激な設定や、濃いキャラクターが目を惹くかもしれませんが、「遊んで良かった」と思ってもらえるように、真心を込めて作りました。映画一本分くらいのボリュームで、そこまで難しい操作もないので、週末の昼下がりとかに気軽に楽しんでほしいです。もちろん深読みしてもらっても耐えられるように練っていますので、お好みのスタイルで楽しんでください!
『BUZZ or DIE』は2026年Steamでリリース。
嬉しい続報も準備中です。お楽しみに!!
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