講談社ゲームラボと作品を作っている作者(=ラボメンバー)を紹介する「ゲームラボと創る」。今回はTGSで配布した雑誌に掲載したインタビューを【特別編】として公開!
ゲームの世界にも、漫画家や小説家のように個人で活動するプロの作家が存在する。
彼らはなぜ会社に属さず個人で作るのか、どういう思考で大規模ゲームと比肩し世界中の人々の心をつかむ作品が生んでいるのか、そしてプロの作家としての心がけ・・・etc.
講談社の「ゲーム編集部」である講談社ゲームラボと作品を作る、3人の「ゲーム作家」の生の声を鼎談形式でお届けする。

‘92年生まれ。大学在学中から個人で無料スマホゲームの制作に打ち込む。
代表作『ひとりぼっち惑星』は根強いファンを生んだ。’21年より活動の場を本格的にPCに移す。
『違う冬のぼくら』『違う星のぼくら』を講談社から発売。シリーズ累計150万本突破の大ヒットとなった。

‘97年生まれ。ゲーム会社room6に新卒で入社。第一作『In His Time』を講談社より発売後、さらに専念するために独立。
次作『ダレカレ』はストーリーとゲームシステムの調和とモチーフを高く評価されて、
世界中のゲームアワードでノミネートおよび受賞。その中には日本人作家初の賞も含まれる。

‘96年生まれ。ゲーム専門学校卒業。ゲーム会社には就職せず個人作家の道を歩む。
ノンバーバルなパズルゲームを得意とし、代表作『ElecHead』『Öoo』(ともに個人販売)は国際的に高い評価を受けている。
特に後者は『ダレカレ』と並びに昨年多くのゲームアワードで称された。現在、講談社にて最新作を準備中。
「ぜんぶ自分でやるからこそ面白い」
――三名とも今はゲーム作家として活動してるわけですが、最初から目指してたんですか?
ところにょり(以下にょり):
大学在学中にスマホゲーム作りに熱中して、たくさん作って発表してたら、いつの間にか食っていけるくらいに。就活がしたくなくて、そのまま個人ゲーム開発で生きていくことを決めました(笑)。生高橋さんは専門学校入ったときから個人ゲーム開発を考えてました?
生高橋:
いえ、個人開発のことは知らなくて、ゲーム会社に入らないとゲームは作れないと思って入学しました。ただ、一年生のときって全工程授業でやるんですが、部分だけを作ることに違和感を覚えたんです。全部面白いし、全部自分でやるからこそ面白い。そのくらいで丁度『Downwell』のもっぴんさんを知って「この道しかないじゃん!」みたいな。yonaさんはこの中では唯一のゲーム会社経験者ですね。
yona:
お二人に比べたらちょっと勇気が足りてないのかもしれない…(笑)。大学の頃プログラミングにハマって、そこからunityでゲームを作れること知って打ち込んで。それが高じて実践で学びたいなと思って、エンジニアとしてroom6に就職しました。でも、最初からいつか一人でゲームを作りたい想いはあって、社長にも事あるごとに話していました。
にょり:
三人ともほぼ最初から独立志向がある点で一緒ですね。あと鼎談前に話してて気づいたんたんですが、僕たち三人ともプログラミング好きです。
――個人制作の場合、形にするのも全部自分ですから、好きに越したことはなさそうですね。共通点が見えてきたところで、違いが出そうな生活サイクルを教えてください。
にょり:
僕はどちらかといえば夜型なのかな。昼前に起きて、ご飯食べて、夕方まで制作。で、夜ご飯食べて、深夜まで制作。なんか色々整えようと思ったこともあるんですが、とにかく寝れるだけ寝たい性分で、結局崩れてしまう。根詰めて明け方まで作業したら、その分を取り返すみたいに長く寝てしまう。
生高橋:
夕方に起きるとかもあるんで、僕が一番めちゃくちゃかも。今日みたいに早い時間から取材があったり、旅行だったり、強制力のある予定をチャンスに朝方にしようと試みるんですが、気を抜くと夜行性に戻ってしまう。朝方のほうが効率良さそうで憧れますが…。
yona:
私は長らく基本的に22時に寝て6時に起きる生活を送ってます。起きてからのルーティンも決まってて、たとえば朝イチで必ずジョギングをしたりします。崩れるとなんか気持ち悪いんです。決めた手順で何かをカッチリ進めるのが好きで。最近、人前で話す機会が増えてるんですが、。それも周到に準備して臨むことに喜びを見出しています(笑)。もう少し柔軟性高めたほうが制作にプラスになりそうなんですが。
生高橋:
いやyonaさんの作品の良さは絶対そういうところから来てますよ! 作品からめっちゃ伝わってきます。『ダレカレ』とか全部が綿密に構成されていますもん。
にょり:
なんかスーパーで使い道考えずに「万願寺とうらがし買っておこ」とか無さそうですよね。僕、最近見かけると必ず買ってしまう。
yona:
無いです(笑)。買うもの全部メモって、その通りに買うのが楽しい。
生高橋:
僕はちょうど二人の中間くらいかもしれないです。すごく惹かれるものあれば脱線して買っちゃいますし、気分的に余分な買い物しないのが楽しいときもある。
「今の自分のすべてを込める」
――今の話、どこまで事前に決めて、どこまでの流動性を許容するか、制作スタイルにも繋がりそうですね。皆さんが作品作りおいて何を一番大事にしているか教えてください。
yona:
私はやっぱり「ストーリー」ですね。自分の生きてきたテーマ、内面、自分らしさがそこに入っているかを何よりも重視します。というのも、私は毎回、本当に「もしかしたらこれが最後に出せるゲームかもしれない」と思って作っているんですよ。自分の生きてきたテーマ、今の自分のすべて。遊び(システム)の方は、本当に手段で、伝えたいことが先にあって、それを伝えるための遊びを考えているんです。企画段階では「これが本当にゲームとして成立するか」常に不安を抱えているんですけどね。
にょり:
最後の一本、というつもりで挑むのは凄いですね。僕の場合、最上段にあるのは「コンセプト」です。その作品でプレイヤーに体験させたいことそのもの。ストーリーとかは本当に最後の方に決まります。メインのこういう感じ、というのは最初にありますけど、だいぶ最後の方、次回作もまだ全然できていないです。僕のゲームにおいて、ストーリーだけじゃなく、あらゆる要素は「コンセプト」を活かすためのツールというか、手段にすぎない。
生高橋:
だいぶ異なるアプローチで面白いですね。僕は何より「遊び(システムやルール)」が最上段です。映画や小説みたいな受動的なストーリーは別になくてもいいかなとすら思っています。ただ、、ゲームってプレイヤー自身が入れる媒体じゃないですか。だから「プレイヤー自身のストーリー」は作りたいと思ってます。たとえば「ドラクエ5」の「どっちと結婚したか」みたいなのって、ゲームの外側にも広がるすごいストーリーだなって。
ところで、お二人は「企画のコア」って、どうやって見つけて、至っていますか?
にょり:
今作っているゲームに関して言うと、これまで作ってきた二人専用ゲームを担当編集と振り返っていたときに、「実は、今までやってきたことって本当はこういうことなんですよ」みたいなことを、あたかもずっと前からそうでしたみたいな顔で僕が喋ってたんです(笑)。自分で全然そのこと(自分が本当にやりたかったこと)を知らなかったんですけど、なぜか喋ってた、そして「あ、僕やりたかったのってこれだったんだ」って腑に落ちて、それを中心に組んで、発展させて企画が成立した感じ。話して思いつくは結構ある。
生高橋:
前作や過去作の影響は結構ありますよね、わかります。要はアイデアって前作から出ているわけですよ。最新作のコアにはいつも前作の影響があって、「じゃあこれもいけるんじゃないか」って前作を分岐させていく。コアの部分は自分の過去作で循環している感じ。ちなみに一作目はどうだったんですか?
にょり:
もうずいぶん前の話ですが、もともと小説家になりたかったので、小説のアイデアは貯めてて「あ、これゲームにもできるかもしれない」みたいな感じだったかな。あと一週間ゲームジャムを一人で勝手にやってたんですよ。企画を考えるように自分を追い込んでたとも言えるかもしれない。。
生高橋:
…一緒です! 専門学校の課題でゲームジャムがあって「とにかく出せ」みたいな。そこで生まれた作品をもとに次のゲームジャム、また別のゲームジャムで派生系を出して…という感じでしたね。。
にょり:
ふりかえると一作目から結構数珠繋ぎなんですよね。一作目の反省、反省、反省、反省の連続、派生し続けてるところもある。
yona:
私は、今の自分のすべてを込めることが、結果的に企画のコアになっています。優先順位のところでも少し触れましたが、毎回、最新作が遺作になる可能性を念頭に置いてるんです。だから、その時点まで生きてきた自分が持つテーマとかをまず書き出します。そこからお話を作って、そこに調和する「遊び」を考えています。
にょり:
自分の人生、そしてストーリーから広げると。それで完成するのが本当にすごい。
――作家として生きていくにあたって作品を「完成」させてプレイヤーの手元に届けないといけませんよね。「完成」させるための心がけ。あるいは完成の条件を教えてください。
yona:
まだ模索中ではあるのですが…私は最初に作るストーリーが最上段なので、とりあえずストーリーをしっかり描ければゴールってことが分かっているんですよ。そういう意味では、ストーリーを最初に決めるというのは完成させるためには結構いい気がする。
にょり:
最初に枠をがっちり決める。たぶんyonaさんだったらストーリーで骨格を作ってる。僕は外堀を埋める。「これは絶対しない」を敷き詰めていく。「コンセプトをより良くするか」を判断基準に取捨選択をする。それを最初の段階でがっつり決めてから進めることが多いです。そして粛々と進めていく。
生高橋:
僕の中の完成はやっぱり、テストプレイしておもろいって言われるまで。僕が立ち会ったり、補足したりしなくても、最後までちゃんと遊べて、かつ面白いって言われるところ。そこに到達したらリリースします。10人中7人がそうなったら僕の場合はOK。ジャンルで若干異なるかもしれませんがテストプレイは完成にめちゃ重要です。
「想定リリースに意味はない」
――これからゲーム制作を始めてみたい人や、現在進行形で開発をしている未来のゲーム作家アドバイスをください。
にょり:
厳しいようですが、まず「ゲームを作りたいと思っているのに、今作っていない人」に向けて言えば、「もうダメです。おしまい」です。
yona・生高橋:
ほんとに厳しい!(笑)。
にょり:
悩む前にとにかく早く手を動かして作る。それしかないです。頭の中で「こういうゲームをリリースしたら、プレイヤーからこういう意見が来て、自分はこう返して……」と想定問答を何年も続けていても、絶対にどこにもたどり着けません。「想定リリース」には何の意味もない。実際に作って、無理矢理にでも完成させて世に出し、血肉を持った実際のプレイヤーからの厳しい意見を浴びる。それを真摯に受け止める、そのサイクルを回すことでしか、本物の経験値は得られません。
――これはゲーム以外の創作分野でも頻繁に耳にします。一種の真理ですよね。一方で、特にゲームの場合、技術の領域が広いこともあり、作り始めたものの仕様やボリュームが膨らみすぎて完成までの道のりが遠いという声を聞くことも。
yona:
その境遇は痛いほど分かります。私も第一作の『In His Time』は四~五年間、ずっと囚われていました。でもある時いろんな意見に触れた結果「プツン」と諦めて断ち切り、リリースしました。しばらく試行錯誤したのち全く新しいゲーム『ダレカレ』を作り始めたんです。そうしたら、それまでの四年間で頭の中に溜まっていた経験値があったから、一気に、しかも驚くほど早く形にすることができました。
――四年の呪縛から逃れて初めて、自分が成長していたことに気づいたと。
yona:
そうなんです。完成させないと、実は成長してるはずなのに同じステージから抜け出せない。自分を次の段階へ持っていくためにも、一度完成させて、ピリオドを打って前に進むということを念頭に置くのは重要です。
生高橋:
僕はいっそのこと「みんな、どんどんボツにして次に行ってもいいじゃん!」とすら思うんですよね。
にょり:
ボツ、ですか。
生高橋:
サンクコストに囚われてズルズル続けるより、捨てた方が幸せになることもある。最近麻雀を初めて一番学んだことです。降りるべきときは、綺麗に降りる。それは単なる敗北ではなく、次の勝利のための「戦略的撤退」なんですよ。
――自覚的に諦めるということですね。
生高橋:
思いついたのは最近ですが、僕自身の体験に根差してて。専門学校時代にプログラミングでif文ならったあと「RPGなんて余裕で作れるわ!」って勘違いして、周囲に「一週間でRPG作ります」って大口を叩いたことあるんです。でも、いざ作り始めたら「最初の村一つ」の仕様を作るだけで絶望して。「あ、これ無理だ」って悟って、速攻でボツにしました。「すいません、無理でした!」って自分のプライドを早いうちにベコベコに潰したことで、ようやく「完成させられる企画」をまじめに考える習慣が身に着いたんです。あの撤退がなければ、今の僕は絶対にいません。
yona:
確かに……。ズルズルと長引きすぎると、今度は「プロジェクト=自分自身」みたいになっちゃって、仕様を決めるのも、リリースするのも怖くなってしまいますよね。
生高橋:
そうそう、期待値がどんどん上がって、自分がしんどくなるだけ。だから、企業での開発なら大人数に迷惑がかかりますけど、個人開発なら誰にも迷惑はかからない、自分だけの特権なんです。だから「五年作ってきたけど、ここで降りる!」って決断する人は、めちゃくちゃかっこいいと思う。周りのクリエイターだって、その決断の重さを知っているから「よくぞその決断をした! 頑張った!」ってリスペクトされると思う。
にょり:
なるほど。意地でも完成させて世に出し、無理やりにでもピリオドを打つか、あるいはプライドを潰して、潔くボツにする「戦略的撤退」を選ぶか。どちらでもいいんですよね。決断をした瞬間に、それまでの苦労はすべて経験値になる。それでまた、次のステップに踏み出せる。
生高橋:
失敗するのも、ボツにするのも、全部楽しいことの延長ですから。まずは結果を求めすぎず、ゲーム作りという長いマラソン自体を、楽しんで走ってほしいですね。
――みなさん今日はありがとうございました!
3人の代表作はNintendo Switch™、Steam®他にて発売中!
ところにょり『違う冬のぼくら』
きみとぼくの見ている世界は、ほんとうに同じだろうか――
全世界130万人以上が遊んだ「2人プレイ専用」パズルアドベンチャー
価格:710円(税込)/発売元:講談社
Yona『ダレカレ』
”ゲーム界のアカデミー賞“ GDCAを筆頭に国際的ゲームアワードを多数受賞。
1時間の忘れられない物語体験——
価格:600円(税込)/発売元:講談社
生高橋『Öoo』
アハ体験の猛ラッシュが気持ちいい!知識とひらめきのパズルアクション。
米経済誌Forbesで「2025年のベストゲーム1位」とも称されたパズルゲームの新たな金字塔。
価格:1,200円(税込)/発売元:NamaTakahashi(コンソール版はAMATA Games)
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